焼物(読み)ヤキモノ

デジタル大辞泉 「焼物」の意味・読み・例文・類語

やき‐もの【焼(き)物】

陶器磁器炻器せっき土器総称
魚・鳥・獣肉などをあぶり焼きにした料理
金属に焼きを入れて鍛えたもの。刃物
[類語](1瀬戸物磁器陶器陶磁器かわらけ土器/(2炙り物付け焼き照り焼き蒲焼きホルモン焼き焼き鳥焼き肉

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精選版 日本国語大辞典 「焼物」の意味・読み・例文・類語

やき‐もの【焼物】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 火の上で焼いて作った料理の総称。特に、日本料理の献立では、魚を焼いたものをいう。
    1. [初出の実例]「煎(いり)物にても甘(むま)し、焼物にても美(むま)き奴ぞかし」(出典:今昔物語集(1120頃か)三〇)
  3. 陶器・磁器・土器など、土や石の粉末を焼いて作ったものの総称。
    1. [初出の実例]「藤右衛門佐様より為御音信焼物被下候」(出典:梅津政景日記‐元和八年(1622)四月二日)
  4. やきを入れて作った刃物、刀剣の類。
    1. [初出の実例]「もとは焼刃のやき物なれば」(出典:浄瑠璃・用明天皇職人鑑(1705)職人尽し)

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改訂新版 世界大百科事典 「焼物」の意味・わかりやすい解説

焼物 (やきもの)

魚貝類,鳥獣肉,野菜などを焼く料理。材料を直接火にかざすなど,加熱のための容器をかならずしも必要としない最も原初的,基本的な調理法である。日本では古く〈あぶりもの〉といい,〈炙〉の字を用いた。平安時代から宮廷の供宴などに多く見られるのは包焼き(裹焼)(つつみやき),別足(べつそく),ぬかご焼きである。包焼きは,《万葉集》に〈裹める鮒(ふな)〉などと見え,濡らした葉などでフナを包んで焼いたとも考えられるが,室町期の《庖丁聞書》や《四条流庖丁書》には,フナの腹に結び昆布,串柿(くしがき),ケシクルミ,焼栗などを入れて焼き,あるいは煮るものとしている。古く壬申の乱に際して,大友皇子の妃であった十市皇女が包焼きのフナの腹に密書をしのばせて父大海人皇子(おおあまのみこ)に近江方の謀計を伝え,それによって大海人は難をまぬがれたとする伝承があり,嘉儀(かぎ)の料理とされたようである。別足は鳥足(ちようそく)とも呼び,キジのももを焼いたものであった。ぬかご焼きは〈零余子焼〉と書いたが,ヤマノイモにつく珠芽のぬかご(むかご)を焼くのではなく,コイの皮つきの身を大きなぬかごほどに切って串にさし,醬(ひしお)をつけて焼くものだったらしい。江戸時代になると焼物の種類も多くなってくるが,貞享・元禄(1684-1704)ころもてはやされた料理の一つに杉焼きがある。杉箱の中にみそを濃く溶いて煮立て,そこへタイ,カモなどの魚鳥や野菜を入れて煮るもので,杉箱の底にはのり(糊)で塩を厚く塗りつけて焼けないようにした。タイやカモの肉にほのかな木香(きが)をうつすというしゃれたもので,《日本永代蔵》はぜいたくきわまる料理という意味の〈いたり料理〉の一つにこれを挙げている。ウナギ蒲焼の調理法の革命的変化によって一躍万人の賞美するものになり,しぎ焼がシギそのものの焼鳥からナスの料理に変わったのも,きじ焼が同様にキジを材料とするものから豆腐の料理へ,さらに切身の魚の付け焼きへと変化したのも,江戸時代のことであった。

 調理器具の発達によって,現代の焼物料理はいよいよ多様化したが,手法上は直火(じかび)焼きと間接焼きとに分類される。直火焼きは焼網にのせるか串を打って直接火にあてるもので,塩をふってそのまま焼く塩焼きのほか,たれや練りみそをつけて焼く蒲焼,照焼き,鬼がら焼き,田楽焼鳥,焼肉その他があり,材料をあらかじめ調味材につけておいたのち焼くみそ漬,かす漬のようなものもある。間接焼きはなべ,鉄板,天火などを使って間接的に焼くもので,昔は材料を紙などに包んでいろりの灰に埋めたり,ほうろくに入れて火にかけ,ふたの上にも火を置いて蒸焼きにするほうろく焼き(ほうろく)のような手法が用いられたが,今は天火を用いることが多い。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「焼物」の意味・わかりやすい解説

焼物
やきもの

高温で加熱した食品,およびその調理法。煮物蒸し物と異なり,温度の上昇に制限がないのでむずかしい調理法である。しかし高温のために,食品の表面に焦げ目をつけることができる。焼き方には直火焼と間接焼がある。食品を串に刺して焼く串焼,金網に載せて焼く網焼は前者に属する。なかでも魚の塩焼や醤油,味醂などを合せた調味料をつけて焼く照焼が一般的である。間接焼には板焼,天火焼がある。また懐石料理などでは献立の一品目をいう。

焼物
やきもの

陶磁器」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内の焼物の言及

【陶磁器】より

…可塑性に富んだ粘土を用いて所定の形に成形し,高熱で焼き締めた要用の器物で,土器clayware,陶器pottery,炻器(せつき)stoneware,磁器porcelainの総称。一般に〈やきもの〉とも呼ばれる。人類が日常の容器として土器を用いるようになったのは,いまから1万年以上も前の,新石器時代のことである。土器の出現の契機は,煮沸容器としての機能の獲得にあったと考えられる。やがて古代文明の成立と相前後して,原始時代以来の長い伝統をもった酸化炎焼成による赤い素焼の土器のほかに,還元炎焼成による灰色の硬陶が生まれ,次いで灰釉を施した高火度焼成の施釉陶器が出現したことが知られている。…

※「焼物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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