日本大百科全書(ニッポニカ)「火矢」の解説
火矢
ひや
火箭とも記す。矢先に付着した鏑(かぶら)、蟇目(ひきめ)、布などに油をしみ込ませこれに点火し、敵の城や軍船を射て火災を発生させたり、敵を威圧するための矢。『平家物語』法住寺(ほうじゅうじ)焼討ちの際や『太平記』巻6・赤坂合戦のおりに火矢を使用したことが記されている。また火薬が伝来してからは、箆(の)(矢軸)の先にこれを詰める方法が行われた。なお当時の火薬剤としては樟脳(しょうのう)、硫黄(いおう)、塩硝、松脂(まつやに)、灰などが用いられた。そのほか、炮碌(ほうろく)(炮礫・包圭・焙烙とも記す)火矢というのがあった。銅製または素焼土器の空丸の中に火薬を詰め漆塗りとし点火、敵陣に投じ爆発させるもので、『信長記(しんちょうき)』(1622)のなかにこれが使用された記事がみられる。
[入江康平]