デジタル大辞泉
「焙烙」の意味・読み・例文・類語
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ほう‐ろくハウ‥【焙烙・炮烙】
- 〘 名詞 〙
- ① 素焼の平たい土鍋。米・豆・塩などを炒(い)るのに用いる。昔、船中で婦人の便器に利用されることもあった。
- [初出の実例]「土
ほうろく也、蜀之俗多用之也」(出典:杜詩続翠抄(1439頃)八) - 「うちでは除虫菊を炮烙(ハウロク)へ入れてくすべることにしてゐるんでね」(出典:蓼喰ふ虫(1928‐29)〈谷崎潤一郎〉一四)
- ② 火あぶりにすること。火あぶりの刑。
- [初出の実例]「是をほうろくにかけいの罪とも、又俗に申でん責とも申す」(出典:歌舞伎・幼稚子敵討(1753)口明)
- ③ 「ほうろくずきん(焙烙頭巾)」の略。
- [初出の実例]「はうろくは八丈ぎぬの頭巾かな」(出典:俳諧・落花集(1671))
- ④ 無毛の女陰。若い女性を「かわらけ」というのに対し、中年女性についていう。
- [初出の実例]「ほうろくを逢度ごとにふるまはれ」(出典:雑俳・苔翁評万句合(1751‐64))
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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焙烙
ほうろく
炮烙とも書く。また、ほうらくともいう。素焼の平たい土鍋(どなべ)で、米、ゴマ、豆、塩などを炒(い)るのに使われる。漢語の「炮烙(火刑の一種)」を語源とするのであろうが、ほかに「火色(ほいろ)の器(く)」から転じたとする説(『東雅(とうが)』)や、火にかけるときはゆっくりと中身を回転させなければならないので、その点が静御前(しずかごぜん)の法楽舞(ほうらくまい)に似ていることによるとする説(『和漢三才図会(わかんさんさいずえ)』)がある。『物類称呼(ぶつるいしょうこ)』によれば、京都では「いりごら(炒瓦)」、下総(しもうさ)では「いりがら」ともよぶという。摂津、河内(かわち)、播磨(はりま)を主産地とした。割れやすいものの代名詞に使われ、「焙烙千に槌(つち)一つ」(千個の焙烙でも一つの槌で割ることができる)などの諺(ことわざ)がある。
[森谷尅久・伊東宗裕]
焙烙は熱容量が大きいうえ、火の当たりが柔らかいので、食品をむらなく炒(い)るのに適している。食品を炒るので、炒り鍋(なべ)ともいう。また、焙烙に塩を敷いて、昆布や松葉をのせ、魚貝類、キノコ、ギンナンなどを入れ、焙烙を重ねて、蒸し焼きにする焙烙焼きにも利用される。
[河野友美]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
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焙烙 (ほうろく)
浅い皿形の厚手の土器。関西でいう〈ほうらく〉が正しい読みで,〈ほうろく〉はそのなまり。炮烙とも書く。火のあたりがやわらかいので,豆,ゴマ,茶などをいるのに適する。そのため,物炒り(ものいり)を物入りにかけて,出費の続くことを〈焙烙の行列〉というしゃれがある。ほうろく焼きは江戸時代から行われていた料理で,《料理談合集》(1822)には〈ほうろくへしほをもり,魚は何にてもしほの上へならへ,又,ほうろくをふたにして,上下に火を置てやく〉と見えるが,現在ではふつうオーブンで焼き,ポンスしょうゆで食べている。小型のほうろくは伝法(でんぼ)/(でんぼう)と呼び,これを用いて焼く場合は〈でんぼ焼き〉といった。なお,茶の湯では炭手前の際,灰を入れて持って出るのはほうろくを使い,これを〈灰焙烙(はいほうらく)〉〈灰器〉などと呼んでいる。
執筆者:鈴木 晋一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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ほうろく【焙烙/炮烙】
茶葉・豆・ごま・塩などをいるための土鍋。素焼きの浅く丸い皿形のものと、やや小型の丸い鉢形で筒状の持ち手のついたものがある。底に松葉や塩などを敷いて魚介類・野菜・きのこなどを入れ、ふたをして蒸し焼きにした料理(ほうろく焼き)に用いることもある。◇「ほうらく」「いり鍋」ともいう。
出典 講談社食器・調理器具がわかる辞典について 情報
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焙烙【ほうろく】
素焼の浅い皿型の土器。灰焙烙といい,茶道で用いるものもある。火のあたりがやわらかいので,茶,ゴマ,豆などを炒(い)るのに適する。焙烙焼は塩と松葉を敷いた焙烙の上にマツタケ,白身魚,鶏肉,野菜などを置き,他の焙烙を蓋にして蒸し焼きしたもの。
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
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焙烙
ほうろく
素焼の土製の平たい炒り鍋。火にかけて塩,茶,ごまなどを炒るのに多く用いられた。料理に焙烙焼 (蒸し) がある。焙烙を地方によってイリゴラ,イリガラというのは,イリガワラの方言で,ホイロ (焙炉) の器の意。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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普及版 字通
「焙烙」の読み・字形・画数・意味
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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世界大百科事典(旧版)内の焙烙の言及
【ほうろく(焙烙)】より
…火のあたりがやわらかいので,豆,ゴマ,茶などをいるのに適する。そのため,物炒り(ものいり)を物入りにかけて,出費の続くことを〈焙烙の行列〉というしゃれがある。ほうろく焼きは江戸時代から行われていた料理で,《料理談合集》(1822)には〈ほうろくへしほをもり,魚は何にてもしほの上へならへ,又,ほうろくをふたにして,上下に火を置てやく〉と見えるが,現在ではふつうオーブンで焼き,ポンスしょうゆで食べている。…
※「焙烙」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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