無文字社会(読み)むもじしゃかい(その他表記)nonliterate society; preliterate society

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「無文字社会」の意味・わかりやすい解説

無文字社会
むもじしゃかい
nonliterate society; preliterate society

文字言語をもたない民族文化からなる社会。自立,完結しており,構成員は少なく,多くても数万人にとどまる。比較的原始的な技術を用い,社会的分業が未発達で,直接的接触の優勢な社会であり,家族,氏族の機能が支配的である。一般に社会文化的な変化がゆるやかで,いくつかの社会では歴史と信仰口頭伝承によって受け継がれる。伝統主義が強く,宗教が社会統合の役割をなし,呪術もみられる。通過儀礼が重視され,宗教,呪術と政治,経済が混然一体をなしていることも多い。かつてはこのような特徴の有無にかかわらず,非ヨーロッパ的な未知の社会をひとまとめに「未開」primitiveと呼んだが,これは文明との対比における相対的な基準にすぎない曖昧な概念であり,人類学者はより本質的特徴を表す用語に置き換えようとしてきた。無文字社会ということばは,文字の有無が唯一の基準であるため要件を満たすのに十分ではないが,今日ではよく使用されている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「無文字社会」の意味・わかりやすい解説

無文字社会
むもんじしゃかい

未開社会

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の無文字社会の言及

【言語】より

…すなわち,書いた時点にその場に居合わせなかった人々にもその内容を知らしめることを可能にし,知識の譲渡,さらには,印刷術の発達によって知識の普及に大きな役割を果たす。したがって,近年,かつては無文字社会であった社会が文字を用いるようになる例が増えている。ただし,すべての言語社会が文字言語をもつようになったという状況にはほど遠いものがあり,また,文字言語を有する社会においても,それを使用できる人口が限られているなどの問題がある。…

【マス・コミュニケーション】より

コミュニケーション【稲葉 三千男】【香内 三郎】
【マス・コミュニケーションの歴史】

[西洋]
 (1)前史 古代から中世末にいたるまで社会的コミュニケーションの主軸は,直接接触による視覚的映像をともなったオーラル・コミュニケーション(いわゆる〈オーラル・カルチャーoral culture〉の時期)であった。現在でも〈無文字社会〉では,複雑な伝承,慣行,物語などが,文字社会では想像もつかないほど大量に人間の記憶に貯蔵され,必要なときに〈語られ〉て,十分その社会的な機能を果たしている。いわばメディアは,人間の内部にセットされている。…

【歴史】より

…ペルシア語による歴史叙述は,イル・ハーン国時代にジュワイニーラシード・アッディーンとによって始められ,とくに後者の《集史》は世界的視野に立った本格的な世界史で,文字通りペルシア史学を確立させるとともに,その後のペルシア語による歴史叙述の模範となった。年代記【嶋田 襄平】
【無文字社会における歴史と口頭伝承】
 かつては歴史研究といえば,文字のある社会に限られていた。しかし,いうまでもなく文字の使用自体,人類史の全体からみれば,わずかな時代と社会に限られていた。…

※「無文字社会」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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