日本大百科全書(ニッポニカ) 「特定地方交通線」の意味・わかりやすい解説
特定地方交通線
とくていちほうこうつうせん
日本国有鉄道経営再建促進特別措置法(昭和55年法律第111号)により規定された旧国鉄の地方交通線のうち、鉄道がもつ大量輸送機関としての特性が発揮できずバスへの転換が妥当であると判断された旅客輸送密度(1日1キロメートルあたりの平均輸送量)4000人未満の路線をいう。ただし1方向1時間あたり輸送人員がピーク時1000人以上の路線や、代替輸送道路が整備されていない路線、代替輸送道路が積雪のため10日以上不通になる路線、乗客一人あたり平均乗車キロが30キロメートル以上かつ旅客輸送密度1000人以上の路線は、特定地方交通線から除外された。
運輸大臣から特定地方交通線として承認されると、路線ごとに国鉄と沿線自治体などの関係行政機関の間で対策協議会が組織され、バス路線への転換や、地元自治体が出資する第三セクター鉄道として存続するか等が協議された。協議開始から2年間を経過しても合意が得られない場合は、国鉄がバス転換を申請することができた。また転換にあたって1営業キロあたり3000万円の転換交付金が交付されたほか、開業後5年間は毎年の欠損額に対してバス転換の場合は全額、鉄道として存続した場合は半額の補助がなされた。同時に、日本鉄道建設公団が国鉄への無償貸与を前提に建設していた新線についても、地元が受け皿となり引き受ける場合は、工事を完成させて無償貸与するとされた。
特定地方交通線については、基準である旅客輸送密度4000人の妥当性や、対象が路線名単位でなされ、支線が対象にならなかったことへの批判等も存在するが、政治的圧力をはねのけて、利害対立が激しいローカル線の存廃問題に道筋をつけたことは評価できよう。1981(昭和56)~1987年に3回に分けて、83線3157.2キロメートルが承認された。そのうち45線区1846.5キロメートルがバス転換され、38線区1310.7キロメートルは第3セクター鉄道や既存私鉄に譲渡され鉄道として存続した。特定地方交通線の転換は1990年(平成2)4月までにすべて終了した。
[青木 亮]