犬甘保(読み)いぬかいほ

日本歴史地名大系 「犬甘保」の解説

犬甘保
いぬかいほ

武庫むこ川沿いの細長い谷間(旧古市村周辺)に開けた中世の保。現在の犬飼いぬかいを中心にうし初田はつだ南矢代みなみやしろ一帯に比定できる。嘉禎四年(一二三八)三月一二日尼光蓮申状案(歴代秘録紙背文書)によれば、近接主殿とのも油井あぶらいを含めた三ヵ所は元来光蓮の亡夫酒井兵衛太郎入道明政の所領であり、光蓮は犬甘保地頭職を譲り受けていたが、明政死後三保とも押領されたため、関東へ行き、父三善康清(鎌倉幕府問注所初代執事三善康信弟)に依頼して安堵の下文を得て所領を回復した。光蓮は子息政親に主殿・油井二所を与えたところ、政親は犬甘保までも知行しようと百姓に対しても非法を行ったため相論となった。年欠犬甘保雑掌申状案(同文書)によれば、光蓮と政親の相論は嘉禎二年関東御下文によって政親の濫妨が停止されたが、光蓮死後、政親と妹女が相論を続けており、政親は六波羅の下知を承引せず、非法を張行したため、百姓は堪えきれず逃散を企てたという。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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