翻訳|oil well
自然状態で地下に存在する石油を地表までくみ上げ採収する目的で,掘削し仕上げられた坑井。油層の深度が非常に浅くて,かつ自然に噴き上げることがない程度に圧力が低い場合には,よく見かける水井戸と同じように立穴をあけただけの形状をしており,地下にたまった油はひしゃくやポンプを使ってくみ上げられる。しかし一般には,油層の深度は数百mから数千mと深く,かつ自噴するほど圧力が高い場合が多いので,これらを制御するために種々の複雑な装置が取り付けられている。
坑井を掘削した結果,油井となりうると判断された場合には坑井仕上げを行う。坑井仕上げは次の手順で行う。
(1)地表から油層部までケーシング・パイプを挿入し,その外側の坑壁との間はセメントを充てんして固める。これによって将来の油の採収に必要な長期間,坑壁が崩れてくることを防止し,また油がケーシング・パイプの外側を伝わって流れ出ることを防ぐ。
(2)ケーシング・パイプの油層部分に穴をあける。油層の油はこの穴を通ってケーシング・パイプの中に流れ込むことができる。ただし坑井仕上げが完了するまではケーシング・パイプ内に適当な比重を付けた泥水が満たされているので,油は流れ込むことができない。穴をあけるには火薬を利用したガンパーを降下して電気的な遠隔操作で行う。別の方法としては,あらかじめ穴をあけたパイプをケーシング・パイプの降下時に下端に付けておく方法や,ケーシング・パイプの降下を油層の直上部までにとどめ,後から穴あきパイプを油層部に下ろす方法などもある。油層から砂などが多量に流入して採油障害が予想される場合には,防止策としてグラベル・パッキングを施す。
(3)チュービング・パイプを降下する。ケーシング・パイプとの環状の間隙部は,ガンパー孔よりわずか上部の位置にパッカーを設置して,上下を遮断する。パッカーより上にはつねに泥水を入れておくが,パッカーより下は坑井仕上げ後はガンパー孔から流れ込みチュービング・パイプを通って流れる油によって置換される。上述の通常の方法に対して,中近東などでよくみられる巨大油井の場合には,流量が大きいためにケーシング・パイプに直接油を流すケーシング・フローで採油することもある。この場合には,パッカーなしのチュービング・パイプを下げておき,油層抑圧用の泥水の送入線として使用する。
(4)ケーシング・パイプとチュービング・パイプとの地表部は坑口装置に接続される。通常油井の目に見える部分がこれであって,外観が似ていることから通称クリスマス・ツリーといわれている。地下からの油の流量を制御したり,一時的に閉鎖したり,抑圧のための泥水を送入したりするところである。
以上は自噴能力のある油井の説明であるが,採油を続けているといずれ自噴能力がなくなるし,また坑井仕上げの当初から自噴能力のない油井もある。この場合には人工採油法が適用される。ポンプ採油法は,チュービング・パイプの中にポンプを降下して油をくみ上げる方法であり,またガス・リフト採油法は,チュービング・パイプの途中にガスを注入して,これより上部の油の見掛け比重を軽くすることで自噴を誘導する方法である。
→採油 →ボーリング
執筆者:中山 勧
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
油を採収するため掘削された坑井をいう。世界最初の油井はドレークにより1859年、アメリカのペンシルベニア州で掘削された。開発される油層深度が深くなり、現在は深度5000メートル以上の油井も掘られている。坑井の掘削が終了すると、ケーシングを挿入し、セメンチング作業とよばれる作業でセメント液を坑井に圧入して、ケーシングの周りをセメントで固める。これは、油層より上部にある水層の水が、油井や油層に流入するのを防ぐためである。ことに水層からの水が油層へ流入すると、油の流出面がふさがれて、油井の寿命は短くなる。油はチュービングを通って地表へ流出する。チュービング上端にはビーンが取り付けられ、産油量を調整する。
[田中正三]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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※「油井」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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