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獲得社会 かくとくしゃかいaquisitive society

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

獲得社会
かくとくしゃかい
aquisitive society

イギリスの経済史家 R.H.トーニーが"The Aquisitive Society" (1920) のなかで展開した資本主義社会の特徴づけ。同書で彼は資本主義社会を資本家の富の獲得と独裁とによって産業組織の機能が麻痺している「獲得社会」としてとらえ,産業組織が十全的に機能しうるのは財産のより平等な分配と労働者の民主的自治によってだけであり,そのためには労働者の教育水準の向上が必要であるとしてギルド社会主義的・機能主義的立場から現存資本主義社会を鋭く批判した。「獲得社会」という用語は,現在ではより一般化して,万人が人格的成長という社会の目的に奉仕する,いわば理想社会たる「機能社会」との対比で,物質的富の獲得それ自体が自己目的となっている社会の意味で使われている。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

獲得社会
かくとくしゃかい
acquisitive society

イギリスの経済史家R・H・トーニーことばで、富の獲得とその所有を第一の目的とする社会、すなわち資本主義社会のことをいう。トーニーによれば、機能よりも権利を重視するこの社会で産業化が進むと、所有と勤労が分離し、所有は安全を求めて、結局「非機能的所有の圧政」が生ずることになる。そこで富の獲得と所有を、社会的義務の遂行に従属させる機能社会が必要であり、そのために、産業を専門家の支配のもとに置いて資本家を排除し、解放しなければならない。しかし、産業の国有化は、しばしば効率の低下をもたらすので、専門家の感情に訴えるような新しい経済心理学が必要である。知的プロレタリアートが成長し、産業からますます「経営business」が分離してきている状況のもとでは、単なる必要性を越えて勤労する頭脳労働者が重要な役割をもつことになる。このような意味で新しい価値観をもつ機能社会によって、獲得社会は越えられなければならないのである。[庄司興吉]
『R. H. Tawney The Acquisitive Society (1982, Wheatsheat Books Ltd., London, U.K., lst print 1921)』

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