翻訳|capitalist
一般的には,市場において資本を投じ,労働者を雇い,生産活動や売買活動を行って利潤を得る人々のことをいう。しかし通常は古代,中世における手工業者,商人,金貸などを資本家とはよばない。資本家という規定は近代資本主義経済の成立とともに生まれたものであり,具体的には18世紀末から19世紀初頭にかけての産業革命を契機として,イギリス綿工業において近代的な産業資本が登場して以後のことである。
〈資本〉の機能を初めて体系的に分析したK.マルクスは,資本主義システムは資本と賃労働の基本的対立を基軸として動いており,資本家は賃金労働者が生み出す剰余価値を搾取しているとみなし,したがって資本主義社会は,生産手段を所有する資本家階級が生産手段をもたず労働力商品しか売るものがない直接的生産者(労働者)階級を支配する階級社会であると説いた。
しかし資本主義経済および民主主義的社会システムの高度な発達とともに古典的階級関係は大きく変容した。産業構造の高度化・複雑化が進むかたわら,株式会社制度の発展に伴う所有と経営の分離,株式の分散,大衆化による多数の小株主の登場,J.K.ガルブレースのいわゆるテクノストラクチャーや中間層の増大,さらに政府機能の拡大等々によって階層構造の複雑化,階層間の相互浸透が著しく進行し,〈資本家〉という概念はいまや,〈賃金労働者〉同様,旧来の固定的イメージを離れ,具体的実体の裏付けに乏しい抽象的・一般的概念になりつつある。
かつて勃興期の資本家は,特権勢力主導の封建的・重商主義的遺制を廃し,近代的自由市場システムを確立せしめんとする社会革新のリーダーであった。しかし現代では,〈資本家〉という表現は,労働者階級に敵対する保守的・反動的勢力というマイナス・イメージをもち,労働者階層や資本主義システムの批判勢力によって使われる場合が多い。
執筆者:木村 一朗
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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[資本主義と市場経済]
資本主義経済においては,生産活動も生産の必要そのもののためになされるのではなく,利潤の獲得のためになされる。資本主義の生産方法は,資本の所有者(資本家)が,それを投下して生産に必要な原料・機械そのほかの諸手段を購入するとともに,賃金を払って労働者(賃労働者)を雇用し,工場・職場で財・サービスを生産させ,それらを商品として販売することによって利潤を獲得する,つまり資本による営利の企業活動として行われる。 このような生産方法が実際に可能になるためには,生産した財・サービスを販売する市場が存在しているだけでなく,生産手段と労働力を調達する市場が存在していなければならない。…
…というのは,市場経済の形成過程とは確かに一面では封建的土地所有と農奴制の解体を伴うが,これは同時に土地を剝奪された農民や小生産者が賃労働者へと転化する過程だからである。こうして一方に生産手段の所有者たる資本家,他方に無産者たる労働者が創出されるが,この過程が〈資本の本源的蓄積〉ないし〈資本の原始的蓄積〉と呼ばれるものである。近代社会の私有財産制度は事実上はこのような過程を経て形成されたのであり,この側面から見れば,先に述べた自由な経済主体の自由交換という市場の理解はあくまで資本家をモデルとした一つの理念にすぎず,実際には市場経済(資本主義経済)とは私有財産制を軸に新たに編成された階級社会とも考えられる。…
… しかし,〈分割地所有〉を一義的に,封建制から資本主義への移行期における,農業そのものの近代的発展のための,必要な一通過点としてだけ規定しえないことは確かである。封建制から資本主義への移行期における〈分割地所有〉者層は,その中から資本家を生み出しつつ,みずからの小経営の基礎であった共有地(とくに共同放牧地)や農村家内工業を破壊するという役割を果たした。つまり,〈分割地所有〉は封建的・共同体的諸関係からの農民の人格的自立の基礎をなし,さらに彼らの〈両極分解(農民層分解)〉を通じて近代への移行を準備するという意味で,積極的役割を果たした。…
※「資本家」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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