珪肺症(読み)けいはいしょう(英語表記)Silicosis

六訂版 家庭医学大全科 「珪肺症」の解説

珪肺症
けいはいしょう
Silicosis
(呼吸器の病気)

どんな病気か

 数年から十数年の長期間にわたり、遊離珪酸(SiO2)の粉じんを吸いこんだ人に発症するじん肺で、珪肺症と呼ばれています。職業性肺疾患であり、鉱山での作業、砂岩花こう岩の切り出し、研磨作業、トンネル工事、鋳物工場での作業、陶器職人など、日常的に珪酸を吸入する環境での仕事により発症します。

 吸いこんだ珪酸は肺に到達し、肺組織を障害し、さらにマクロファージ上皮などを刺激することにより線維化を起こす病気です。障害のはじまりは、上側の肺に密な粒状の陰影がみられ、さらにそれらが、徐々に結合して大きなかたまりになり、塊状(かいじょう)となります。

症状の現れ方

 珪肺の病変は軽快することはなく、緩徐に進行していくといわれています。症状は、珪酸によりできた肺内の線維化巣、結節病変などにより呼吸機能の低下が起こり、呼吸困難などの症状が出現するようになります。初期は無症状ですが、進行とともに咳、痰、また労作時呼吸困難、倦怠感(けんたいかん)、体重減少、さらに安静時にも呼吸困難が出現するようになります。

 合併症として注意しなければならないものに、結核(けっかく)気管支拡張症(きかんしかくちょうしょう)気胸(ききょう)肺(はい)がんなどがあります。また、まれな合併症ですが、カプラン症候群と呼ばれる、関節リウマチに合併し、両側の肺に円形の塊状陰影を示す病態があります。

検査と診断

 呼吸機能検査では、特徴的な障害パターンはなく、拘束(こうそく)性換気障害や閉塞性喚起障害、また拡散能力の低下などが起こります。

 胸部X線写真では、初期にはほとんど陰影は認められず、その後は粒状陰影がみられるようになります。この粒状陰影は、上中肺野に多くみられます。その後、この粒状陰影は融合してかたまりのようになるため塊状陰影と呼んでいます(図33)。下肺野には気腫性の変化がみられたりもします。特徴的な陰影のひとつとして、両側の肺門リンパ節の卵殻状陰影があります。

治療の方法

 根本的な治療法はなく、喀痰(かくたん)が多い場合には去痰薬投与、さらに合併症に対する治療が行われます。また、低酸素状態に対しては酸素療法が行われます。

 重要なことは、予防であり、職場で珪酸を吸入しないようにすることです。そのためには、粉じんの発生を避けるようにすること、作業所にフィルターをつけることによる粉じんの除去マスクを着けるなどにより、肺内に珪酸が入らないようにします。


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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