出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
ダクタイル鋳鉄ともいう.鋳込みのままで鉄中に黒鉛が球状に晶出しているもの.1947年にイギリスで鋳鉄にCeを添加することにより,また1948年にはアメリカでMgを添加することにより黒鉛の球状化に成功したが,Mgのほうが安価なため,広く利用されている.わが国では,Ca-Si合金などの添加でも球化することが見いだされている.黒鉛は,フェライトやパーライトに比べて強さがいちじるしく低く,鋳鉄中では空洞とみなすこともできるほどであるが,その黒鉛が普通鋳鉄のように片状に晶出すると,その切欠き効果によって強さがいちじるしく低下するのに対し,黒鉛が球状になれば,強靭性がいちじるしく改善され,引張強さが100 kg mm-2 に及ぶものまで生産できる.耐熱性,耐摩耗性,耐食性などもすぐれているので,機械部品,鋳鉄管,圧延ロール,鋼塊鋳型,ブレーキシュー,炉材金物,土木建築用鋳物などに広く利用されている.Cは3.4~4.0質量%,Siは1.8~2.5質量%,Mnは0.8質量% 以下,Sは0.03質量% 以下である.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
組織中の黒鉛を球状にした鋳鉄。普通の鋳鉄鋳物では黒鉛結晶が薄片状の形で含まれているので強さも低く延性も小さいが、1948年イギリスで、49年アメリカで、それぞれ鋳鉄にセリウムあるいはマグネシウムを少量添加して黒鉛結晶を球状に凝固させることに成功し、鋳鉄の強さ、延性が飛躍的に向上した。これを球状黒鉛鋳鉄とよび、結節状という意味でノジュラー鋳鉄、さらに延性に富むのでダクタイルductile鋳鉄などともよばれる。上水道用鋳鉄管や自動車足回り部品などに広く用いられ、現在では鋳鉄鋳物全体の約40%を占めるに至っている。引張り強さは1平方ミリメートル当り40~70キログラム、伸びは2~15%を示す。
[井川克也]
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