生検(読み)セイケン

デジタル大辞泉 「生検」の意味・読み・例文・類語

せい‐けん【生検】

生体から細胞・組織を外科的に切り取ったり針を刺して取ったりして調べ、病気の診断を行う方法。バイオプシー生体組織診断生体材料検査

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精選版 日本国語大辞典 「生検」の意味・読み・例文・類語

せい‐けん【生検】

  1. 〘 名詞 〙 病気を確定するために、生体から組織の一部を切りとって検査する方法。リンパ節、肝臓、腎臓、皮膚、筋肉、癌組織などについて行なう。バイオプシー。

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内科学 第10版 「生検」の解説

生検(神経学的検査法)

(1)
末梢神経生検(nerve biopsy
) 末梢神経生検には一般的に腓腹神経(sural nerve)が選ばれる.腓腹神経は第4,5腰髄および第1,2仙髄後根神経節に細胞体をもつ第一次感覚ニューロンと,交感神経節後ニューロンの軸索からなり,坐骨神経・総腓骨神経から分岐して下腿後面から外踝後方をまわり,足背外側へと至る皮神経である.腓腹神経が選択される理由は,①ヒトでは運動神経を含まないため,術後に運動麻痺をきたさないこと,②下肢遠位部にあり,各種ニューロパチーで侵されやすい(つまり所見が出やすい)こと,③解剖学的破格が少ないこと,④感覚神経伝導検査との対比ができること,⑤過去の症例の蓄積があり,比較対照が容易であること,の5点に集約される.
 外踝後方で外踝上縁より約2横指上方,アキレス腱との中間の部位に縦方向に3~4 cmの切開を加えて採取する.生検の詳細については他書にゆずるが,同一の切開創から短腓骨筋の生検も可能である.切離した腓腹神経の標本作製にあたっては通常のパラフィン包埋だけでは不十分で,エポン包埋(光顕用のトルイジンブルー染色と電顕用超薄切片の両方が作製できる)とときほぐし標本の2種類は最低作る必要がある.特に,トルイジンブルー染色を施したエポン包埋切片は美しい髄鞘染色となり,現在では末梢神経を光顕的に観察するにあたっての国際的標準である.
a.腓腹神経生検所見
 腓腹神経生検で得られる情報は,第一次感覚ニューロンおよび交感神経節後神経の遠位端に近い部分での軸索および髄鞘の変化であることを常に念頭におく.腓腹神経の有髄線維成分はすべて感覚線維であり,健常成人では有髄線維密度はほぼ6000~10000/mm2の間にある.直径分布ヒストグラムでは大径線維(直径7~12 μm)・小径線維(直径1~4 μm)の二峰性分布を示す.無髄線維成分は感覚線維と交感神経節後線維(割合は7:3程度といわれる)によって構成されており,個々の線維の直径は0.1~2.0 μmの間にある.健常成人では無髄線維密度はだいたい20000〜40000/mm2の間にあることが多く,直径分布ヒストグラムでは0.8〜1.2 μm近辺にピークをもつ一峰性分布を示す.
 軸索変性と脱髄がニューロパチーの代表的な病的過程である(図15-4-21).急性の軸索変性であればミエリン球(myelin ovoid)の多発が,慢性の軸索変性であれば有髄線維密度の減少が前景に立った変化となり,急性の脱髄であれば髄鞘を有しない軸索(naked axon)やミエリンをマクロファージが貪食している像(軸索は保たれている点がミエリン球と異なる),慢性反復性の脱髄であれば髄鞘の菲薄な線維やオニオンバルブ(onion bulb)形成がそれぞれ主体となる病的変化となる.慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(chronic inflammatory demyelinating polyradiculoneuropathy:CIDP)などの炎症性ニューロパチーでは,神経内鞘への細胞浸潤がみられることがある.また,神経内鞘の浮腫が高頻度に観察され,間接的に炎症の存在を示唆する.
b.腓腹神経生検が適応となる疾患
 末梢神経生検が診断的に大きな価値を有し,常にその適応を念頭におくべき疾患は以下のとおりである.
 ⅰ)血管炎に伴う虚血性ニューロパチー
 各種膠原病に伴う血管炎では小動脈が病変の主座となる.この大きさの動脈は末梢神経幹にとっては終動脈であるため,炎症によって閉塞すると末梢神経の梗塞をきたし,ニューロパチーを発症する.小動脈のフィブリノイド変性や血管周囲の細胞浸潤を観察するにはパラフィン包埋のH-E染色が適しており,血管炎のもう1つの重要な所見である弾性板の破綻の有無を確認する目的でvan Gieson染色などを追加する.血管炎は検体内のすべての小動脈に一様に存在するわけではない.1枚の標本で明らかな所見が得られなかった場合は可能な限り多数のブロックを切って血管炎を探す必要がある.同時に採取した短腓骨筋にのみ血管炎の所見が認められることもしばしば経験する. 本症は急性ないし亜急性の軸索変性が基本的病変であるので,有髄線維は密度の減少とともに多数のミエリン球を認める.血管炎に基づくニューロパチーでは神経束ごとに,また,同一神経束内でも部位によって病変の程度に差があることが多い.これは,栄養血管の閉塞によって梗塞に陥った部位と梗塞を免れた部位の混在と考えれば理解しやすく,血管炎の存在の間接的な証拠となる重要な病理所見である.
 ⅱ)サルコイドニューロパチー
(sarcoid neuropathy
) サルコイドーシスの約5%に末梢神経障害を合併するといわれているが,ニューロパチーのみが症状の場合の診断は難しい.生検で神経上膜にサルコイド結節がみつかることがしばしばある.この場合も短腓骨筋の同時生検は有用である.
 ⅲ)アミロイドニューロパチー
(amyloid neuropathy
) 末梢神経障害を示すアミロイドーシスはAL型と家族性アミロイドポリニューロパチー(familial amyloid polyneuropathy:FAP)である.末梢神経幹はアミロイドの沈着しやすい部位の1つであるため本症での末梢神経生検の診断的意義はいまだに高く,Congo-red染色で赤染し,偏光顕微鏡でグリーン/オレンジ色の偏光を放つアミロイド物質を光顕的に認め,電顕でアミロイド細線維を確認すれば診断が確定する.同時に生検した短腓骨筋や皮膚にのみアミロイドが観察されることもしばしば経験する.小径有髄線維と無髄線維が選択的に脱落するのが大きな特徴で,これは本症で臨床的にみられる自律神経障害や温痛覚の低下と合致する病理所見といえる.
 ⅳ)Hansen病
 発展途上国ではいまだに重症ニューロパチーの重要な原因疾患である.感覚神経の障害がきわめて強く,腓腹神経内の神経線維がまったく消失してしまうような例もまれではない.神経束内にMycobacterium leprae
を認めることがあり,抗酸菌染色による光顕的観察と電顕的観察が必要である.
 ⅴ)その他の疾患
 上記の4疾患に比べると診断的な価値はやや落ちるが,CIDP,n-ヘキサン中毒によるニューロパチー,巨大軸索性ニューロパチー,遺伝性圧脆弱性ニューロパチー(hereditary neuropathy with liability to pressure palsies:HNPP),Fabry病,Krabbe病などで特異性の高い変化がみられることが多い.
c.腓腹神経生検の合併症
 腓腹神経支配領域の全感覚脱失は必発であるが,その範囲は症例により異なり,ほとんど関知できないような場合もある.Dyckら(1992)は生検施行1年後の患者について調査を行っているが,60%は無症状,30%に軽度の違和感・異常感覚が残存し,10%に患者を悩ますような強い異常感覚・錯感覚が出現したと記載している.いったん切除した神経は再生しない.生検の適応については十分に検討を加えたうえで,術後合併症の可能性についても患者に十分に説明したうえで行うべき検査法である.
(2)
筋生検(muscle biopsy)
 骨格筋は全身に分布しているのでどの筋からも生検は可能であるが,一般的には筋量が豊富でアプローチしやすく,また,通常生検が頻繁に行われる筋からの採取が望ましい.この点から選択されるのは上腕二頭筋,三角筋,大腿直筋,外側広筋,前脛骨筋,腓腹筋などである.上述の神経生検時に同時に採取可能な短腓骨筋もよく選択される.筋痛や筋把握痛を強く訴える場合はあわせて筋膜の採取も必要である.生検終了後は必ず筋膜を縫合閉鎖する.
 生検部位の決定は十分な検討を加えて決定する.筋力低下や筋萎縮があまり著明でない軽度から中等度の罹患部を選択するのがふつうで,筋力正常部位からは陽性所見が得られないことがあり,一方,筋力低下・筋萎縮がきわめて著明な部位を選択すると筋線維がほとんど脂肪や結合織に置換され,必要な情報が得られないこともしばしば経験する.徒手筋力テスト,視診,触診に加えて筋電図・筋CTからの情報が必須である.また,多発筋炎・皮膚筋炎を疑う場合は筋MRIが有用で,炎症所見が病理学的に証明される可能性が高い部位(T1高信号を伴わないT2
高信号領域)を特定することが可能となる.
a.筋生検所見
 神経生検と同様,通常のホルマリン固定パラフィン標本が有用であるのは筋炎(血管炎を含む),サルコイドーシス,アミロイドーシスなど一部の疾患に限られる.凍結標本と電顕標本による観察が国際標準である.
 ⅰ)凍結標本
)H-E染色標本:
最も基本的かつ重要な染色法で,診断の80%は1枚の凍結H-E標本でつくといっても過言ではない(図15-4-22).筋の大小不同の有無,萎縮筋の形状を観察する.一般に筋原性萎縮線維は円形を,神経原性萎縮線維は角化した形(angular fiber)をとる.神経原性の萎縮では小角化線維の集簇が起こることが多く(grouped atrophy),筋萎縮性側索硬化症のような急速な筋萎縮では小群集萎縮が,Charcot-Marie-Tooth病や頸椎症のようなゆっくりとした過程では大群集萎縮がみられる.筋炎では細胞浸潤のほか,筋線維の壊死再生がみられる.壊死線維はエオジンの赤色が薄くなってマクロファージによる貪食が観察され,再生線維はbasophilicで核が大きく目立つという特徴を有する.筋束周辺部の筋線維の萎縮(perifascicular atrophy)は皮膚筋炎を示唆する重要な所見である.筋ジストロフィ症では筋線維の壊死再生や間質増生・脂肪化がみられ,過収縮して濃染する線維(opaque fiber)が多数観察される.サルコイド結節や血管炎の有無もH-E
染色で確認できる.
2)Gomoriトリクローム変法
(modified Gomori trichrome)

ミトコンドリアライソゾームなどが赤く染まるので,異常ミトコンドリアの集積するミトコンドリア病の診断に有用である.本症では赤色ぼろ線維(ragged red fiber)が多数観察される.rimmed vacuole型遠位型ミオパチーに観察される縁どり空胞(rimmed vacuole
)や,ネマリンミオパチーでみられるネマリン小体もこの染色法で観察される.
3)ミオシンATPase染色標本:
筋線維タイプの分別に用いられる.pH10.5前後の前処理を行ったときに染色される線維をタイプ2線維,染色されない線維をタイプ1線維という.タイプ2線維は白筋(速筋)に,タイプ1線維は赤筋(遅筋)に相当する.正常筋肉ではタイプ1線維・タイプ2線維は交互に配列している(checker-board pattern)が,長期にわたる神経原性筋萎縮では筋がどちらかのタイプにかたよって集簇し,fiber type groupingとよばれる(図15-4-22B).タイプ1線維に限局した筋萎縮(type 1 atrophy)は筋強直性ジストロフィに比較的特異的にみられるのに対し,タイプ2線維に限局した筋萎縮(type 2 atrophy
)は非特異的所見で,筋炎,廃用性萎縮,低栄養などで観察される.
4)免疫組織化学:
筋ジストロフィ症の診断に現在では欠くことのできないものとなっている.たとえば,Duchenne型筋ジストロフィ症,Becker型筋ジストロフィ症ではジストロフィン染色で異常が認められ,前者ではジストロフィンが筋線維膜に欠損しているため全く染色されず,後者では筋線維膜上にまだらに染色される.このほかにもジスフェルリン,カルパイン,エメリン,メロシン,αジストログリカンなどに対する特異抗体が市販されており,診断確定に寄与している.
5)その他:
NADH-TR染色(筋原線維内部の乱れを観察する),PAS染色(糖質の蓄積を診断する),アセチルコリンエステラーゼ染色(神経筋接合部の形態をみる)などが汎用される染色法である.
 ⅱ)電顕標本
 ほとんどの筋疾患は光顕レベルで診断可能であるが,封入体筋炎(約10 nmの太さのフィラメント状の核内・細胞質内封入体が観察される),ネマリンミオパチー,ミトコンドリア脳筋症(異常ミトコンドリアとその内部に類結晶状封入体(paracrystalline inclusion)がみられる)をはじめとする多数の疾患で特異的な所見が観察される.
b.筋生検の適応
 末梢血からの遺伝子診断手技が確立している疾患(筋強直性ジストロフィなど)での意義は乏しいが,すべての筋疾患が筋生検の適応となる.成人で重要なのは炎症性筋疾患とミトコンドリア病であり,小児科領域を含めると膨大な種類の筋疾患が本手技の対象となる.
c.筋生検の合併症
 骨格筋は再生力に富む臓器であり,筋生検による後遺症は皆無といってよいが,筋肉採取後の圧迫止血や安静が十分でないと,局所に大きな血腫を形成することがしばしばある.筋肉の採取時や生検終了時の縫合の際に大きな血管や神経を巻きこまないようにする注意も必須である.[神田 隆]
■文献
神田 隆:末梢神経疾患.神経病理カラーアトラス(朝長正徳,桶田理喜編),pp234-253,朝倉書店,東京,1992.
埜中征哉:臨床のための筋病理,第3版,日本医事新報社,1999.
岡 伸幸:カラーアトラス末梢神経の病理,中外医学社,東京,2010.

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改訂新版 世界大百科事典 「生検」の意味・わかりやすい解説

生検 (せいけん)
biopsy

医学用語。バイオプシーとも呼ばれる。生体の臓器あるいは組織の一部を取り出して,病理組織学的に診断を確定することをいう。この際,臓器あるいは組織の病変が均等に存在する場合は,そのいずれの部分を取り出しても診断は妥当であるが,病変が臓器あるいは組織内で均等に存在せず,部分的に限られて存在する場合には問題となる。すなわち,その個所を採取できた場合は正しい診断を下しうるが,そうでない場合は誤った診断を下す可能性がある。後者の場合,誤って陰性の診断を下すという意味で〈疑陰性false negative〉と呼び,癌のような悪性病変の場合,きわめて重大である。本法の欠点はこの疑陰性にあり,生検は病理組織学的な最終診断であるだけに,疑陰性のもつ意味はきわめて大きいといわざるをえない。このことをふまえたうえで総合的な診断が必要となる。

生体の一部の採取方法により,生検は針生検,擦過生検,パンチバイオプシー,外科的生検,完全生検などに分けられる。

(1)針生検needle biopsy 特殊な針(普通はジルバーマンSilverman針を用いる)を臓器あるいは組織に刺入して回転させ,臓器あるいは組織の一部をねじり切り採取するものである。これは,たとえば,ようかんに中空の針をさし,回転して引きぬくと,針の中にようかんの一部が採取できるのと同じ原理である。体表の臓器では,主として甲状腺,乳腺,リンパ節が対象となり,体腔内臓器としては,肝臓,腎臓が対象となる。針生検では皮膚を通して,しかも勘と経験にたよって臓器に針をさすことになるので熟練を要するが,その得られる情報量はきわめて大きい。

(2)擦過生検sponge biopsy 擦過細胞診ともいう。食道,胃などの管腔臓器の病変が対象となる。スポンジを病変の表面にあてて何度もこすり,機械的に細胞をはがして診断に供する。したがって採取できるのは細胞のみで,組織は採取できない(それで細胞診cytodiagnosisとして生検とは別に扱うこともある)。病変の良性・悪性の鑑別に威力を発揮する。なお擦過生検の一つの変法になるが,ある種の液体で臓器の表面を数回にわたり洗浄して細胞を採取する洗浄細胞診がある。子宮頸癌の早期発見に用いられ,一般の人がセットを腟へ挿入して洗浄し,細胞を採取するもので,自己採取法と呼ばれる。郵送すれば結果が送られてくる簡便なもので,推奨される方法である。

(3)パンチバイオプシーpunch biopsy 内視鏡を介して管腔臓器の組織の一部を採取する方法である。内視鏡を管腔臓器(食道,胃,直腸など)へ挿入し,直視下に病変を観察しながら,内視鏡を介して挿入した特殊のパンチ用器械で,組織の一部を切除する。一つの病巣から何回も組織の採取が可能である。主として病変の良性・悪性の鑑別に用いられるが,何ヵ所も採取が可能なので,一臓器内の瀰漫(びまん)性病変の分布状態を調べることにも応用され,その適応範囲はきわめて広い。

(4)外科的生検surgical biopsy すべての臓器や組織を対象とし,手術生検,外科的診査切除,あるいは切開生検open biopsyとも呼ばれる。切開して組織あるいは臓器の一部を切除する方法である。これには,病変の一部分のみを切除する切開生検incisional biopsyと,病変全体を取ってしまう切除生検excisional biopsyとの2通りの方法がある。対象や目的によって使い分けられている。頸部のリンパ節は,いろいろな病気の際にはれて,病気全体を代表することが多い。そこで頸部リンパ節を切除生検し,組織学的に診断して病気全体を把握することが日常的に行われている。

(5)完全生検 以上述べたように,生検は最終的な組織診断を提供するきわめて優れた方法である。しかし,場合によっては群盲象をなでるがごとき誤りをおかすおそれがある。ことに管腔臓器の隆起性病変(一般にはポリープと呼ばれる)の生検に際しては問題が多い。すなわち,直視下に採取できる側に癌がなくても,反対側に癌のある場合がままある。手前側のみを採取して,癌陰性と診断すれば疑陰性となり,その罪はきわめて重い。最近では隆起性病変全体を根こそぎ取り去り(ポリペクトミーpolypectomyと呼ぶ),組織学的に丹念に検索する方法が行われている。このようにすると生検と同時に治療も完成するので,完全生検と呼ばれている。
細胞診
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「生検」の意味・わかりやすい解説

生検
せいけん

生きている人間、すなわち生体から組織の一部を採取し、その組織学的形態像から病気の診断を行う方法で、バイオプシーbiopsyともいう。皮膚生検のように体表から生検を行う場合には、その方法は比較的簡単であるが、体内の臓器から生検をする場合には、ファイバースコープを代表とする内視鏡を介して生検する。たとえば食道、胃、小腸および大腸のような消化管では、ファイバースコープによる直視下生検が行われている。また、肝臓に対しては腹腔(ふくくう)鏡直視下に行う肝生検のほか、内視鏡を使わない盲目的な肝生検も行われている。なお、胃癌(がん)とくに早期胃癌の診断には胃生検が不可欠である。また、従来生検が困難であった膵臓(すいぞう)に対しても、膵生検が試みられるようになった。

[竹本忠良]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「生検」の意味・わかりやすい解説

生検
せいけん
biopsy

試験切除あるいはバイオプシーともいう。生体から検体 (組織切片など) をとって行う病理組織学的検査法で,死体の解剖による剖検に対するもの。病変 (たとえば癌) の確定診断,あるいは疾病の予後判定をするために必要不可欠のものとされており,すべての臓器に適用される。肝臓や腎臓の穿刺生検法,胃カメラを用いる胃生検,骨髄生検など,皮膚切開を要しない場合 (針生検) だけを,特に生検ということもある。

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百科事典マイペディア 「生検」の意味・わかりやすい解説

生検【せいけん】

バイオプシー

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栄養・生化学辞典 「生検」の解説

生検

 →生体組織検査

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世界大百科事典(旧版)内の生検の言及

【癌】より

… 内視鏡は,日本でとくに発展をみた検査法で,胃,腸,気管支,泌尿器などの管腔に光を運ぶ細いガラス管を束ねてつくったファイバースコープを入れて観察や撮影を行い,同時に先に備えた器具で疑わしい組織を採取する。 生体から組織を採取して組織学的に検索することを生検(バイオプシーbiopsy)という。癌の診断は,最終的には生検で行う。…

【子宮癌】より

…それは,細胞診で癌と診断されても,癌でない場合(偽陽性率)が低率ではあるが存在するからである。(2)組織診biopsy 疑わしい部位から組織をとり,標本を作って顕微鏡検査をするのを組織診という。採取する組織は米粒大のもので,少し出血をするが縫合する必要はまずない。…

【内視鏡】より


[内視鏡を用いて行う検査]
 内視鏡を用いてさまざまな検査が行われるようになった。(1)生検biopsy,細胞診cytodiagnosis 径2mm以下のきわめて小さいはさみまたはさじ状のもの(生検鉗子)を内視鏡内に設けたパイプを通して挿入し,目的の部位から組織や細胞を採取して顕微鏡的に検査する。胃腸や気管支の粘膜には皮膚におけるような痛覚はないので,痛みなく実施できる。…

【病気】より

…病理解剖学的診断とは,症候論的診断を可視化することで行われる。最終的,結論的には,身体内部を開けて直接病変部位を確認することによって得られるが,その代用として,疑わしい組織の一部を採取して顕微鏡で検査したり(これを生検biopsyという),胃カメラ,気管支鏡,膀胱鏡などの内視鏡で病変を確認したり,あるいはX線や超音波などで間接的に病変部の輪郭を確認することで判断することも含まれる。器質的疾患の診断としては,最も中核的な局面である。…

【癌】より

… 内視鏡は,日本でとくに発展をみた検査法で,胃,腸,気管支,泌尿器などの管腔に光を運ぶ細いガラス管を束ねてつくったファイバースコープを入れて観察や撮影を行い,同時に先に備えた器具で疑わしい組織を採取する。 生体から組織を採取して組織学的に検索することを生検(バイオプシーbiopsy)という。癌の診断は,最終的には生検で行う。…

【内視鏡】より

…束ねてあるファイバーの本数が多いほどよい画像を送ることができるわけで,直径が毛髪より細い光ファイバーが数千本以上束ねられている。さらに照明用の光を体内に導くための別の光ファイバーの束が組み込まれているほか,生検鉗子の出し入れや,空気や水を送りあるいは吸引するためのパイプ,先端部を動かすためのワイヤなどがファイバースコープには組み込まれている。先端部に小型の胃カメラを組み込んだものもある。…

【病気】より

…病理解剖学的診断とは,症候論的診断を可視化することで行われる。最終的,結論的には,身体内部を開けて直接病変部位を確認することによって得られるが,その代用として,疑わしい組織の一部を採取して顕微鏡で検査したり(これを生検biopsyという),胃カメラ,気管支鏡,膀胱鏡などの内視鏡で病変を確認したり,あるいはX線や超音波などで間接的に病変部の輪郭を確認することで判断することも含まれる。器質的疾患の診断としては,最も中核的な局面である。…

【病理学】より

… 一般に病理学は,医学においては基礎医学として位置づけられている。しかし,剖検,生検(手術によって取り出された組織材料などの検査)に際しては,臨床医の診察のときと同じように,患者の諸病歴,検査成績などが必要であることをみればわかるように,実地の病理学は,むしろ,臨床医学の一分野を担っているというべきである。現に,アメリカ医師会医師分類では,病院におけるpathologist(病理学者あるいは病理医)を,患者診療に直接たずさわる医師として扱っている。…

※「生検」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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