日本大百科全書(ニッポニカ) 「肝生検」の意味・わかりやすい解説
肝生検
かんせいけん
liver biopsy
肝組織の一部を採取して組織学的に検索する検査法。種々の検査から得られた情報によっても確定診断に至らない肝疾患の鑑別診断や治療効果の判定などを目的に施行される。具体的には、急性肝炎、慢性肝炎、肝腫瘍(しゅよう)、原因不明の肝障害などで適応になる。一方で、画像診断や特異的な診断マーカーの進歩により、近年では生検を行わないで診断や評価がなされることもある。
肝生検には、超音波ガイド下肝生検法、腹腔(ふくくう)鏡下肝生検法、開腹術時の外科的肝生検法などがある。一般に、超音波ガイド下肝生検法がよく行われており、これは、超音波で肝の病変部にねらいを定めるエコーガイド下の肝生検で、超音波で肝臓を観察しながら肝内の病変部位、胆管・脈管系を把握して穿刺(せんし)(針をさす)部位を決定し、その部位の皮膚、皮下組織、胸膜、肝被膜の順に局所麻酔を行う。ついで、注射針よりやや太く長い組織採取用の針を目標とする部位まで穿刺し、肝組織を採取する。ときに右側腹に痛みやひきつれた感じを伴うこともあるが、おおむね数日内に消失する。
重篤な肝疾患や出血傾向が著しい場合、多量の腹水などにより安全に検査が行えないと判断される場合には生検は行われない。
[渡邊清高 2019年11月20日]