改訂新版 世界大百科事典 「生玉万句」の意味・わかりやすい解説
生玉万句 (いくたままんく)
俳諧。井原鶴永(西鶴)編。1673年(寛文13)刊。同年春,12日間にわたり,大坂生玉社において,鶴永が主催し興行した万句と追加百韻の各三つ物,および諸家による祝賀興行の百韻53巻の発句(ほつく)を収める。興行の意図は,鶴永らの一派を阿蘭陀(ナランダ)流とさげすみ,これを疎外して行われた既成勢力による万句に対抗したものという(序文)が,それを口実に中央俳壇進出の野心を満たすべく,鶴永のうった大きな賭けであろう。三つ物に句を寄せた俳壇の重鎮たちは,当日出席しなかったもようである。作風は,〈天川に栬(もみじ)流るゝ珊瑚珠哉 武仙/革巾着やいつの小男鹿(さおじか) 鶴永〉のごとく,きわめて奇抜である。
執筆者:乾 裕幸
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