日本大百科全書(ニッポニカ) 「産業広告」の意味・わかりやすい解説
産業広告
さんぎょうこうこく
主として法人を対象とする、生産財といわれる産業用品、事務用品およびそれらのサービスに関する広告。消費者を対象とする消費財広告consumer product advertisingに対して、英語のindustrial advertisingの訳語として生産財広告ともいう。
産業広告と消費財広告とは次の点で異なる。
(1)生産財の購買にあたっては、事業所の多数の人々の決済で行われることが多い。したがって、個人的な満足感で求める消費財と違って、組織の人々に共通する満足感が必要とされる。
(2)生産財の購入に際しては、事業所側では厳格な予算管理に基づいて行うため、消費財よりかなり長期間にわたって購入品の性能、品質、納期、価格などが多面的に検討される。
(3)産業広告の目的とする商品の購買対象は、ある特定分野の企業、業種に限定されていて、ほとんどあらゆる層の人々を対象とする消費財広告とは異なっている。
(4)生産財の特性、買い手の特質、購買過程の特徴からみると、消費財に比べてパーソナル・セーリングの比重が高いので、セールスマンと協調態勢をとる必要がある。
(5)産業広告の表現では、感情に訴え欲望を刺激する消費財広告と違って、理性に訴える説得解説型の商品広告と、企業イメージの創成をねらっての企業の方針、信用、哲学、主張などを訴える企業広告とが併用される。
(6)産業広告は、主対象である専門技術者だけでなく、セールスマン、問屋、消費者に対しても、経済紙(誌)、専門紙(誌)、技術紙(誌)、ダイレクト・メール、カタログ、ビデオ、映画、イベントなどの媒体を通じて訴求する。
[島守光雄]