二次元的な広がりを持ち,明るさが連続的に変化している画像を処理して,結果としてふたたび画像を得る処理を狭い意味では画像処理と呼んでいるが,ディジタィル画像処理では画像を処理して画像に関する記述データを作成する画像の計測やパターン認識も含めることが多い。本項目では後者について解説する。画像処理の方式としては,感光特性の異なったフィルムを用いたり露光時間を変えたりする写真的手法,レンズを用いた光学的画像処理,テレビジョンやファクシミリのように画像を走査し,光電変換して電気信号に直したのちに電気的な処理を施す電気的アナログ処理,さらに電気信号をディジタルデータに変換してコンピューターや専用の処理装置で処理を行うディジタル画像処理がある。コンピューターを用いたディジタル画像処理では,画像を細かい画素(picture element。ピクセルpixelともいう)の集合として扱い,その1点ごとに直列的に処理を行うため,処理時間がかかるという欠点があるが,非線形な処理が容易に行えること,プログラムにより処理や処理パラメーターが変えられ融通性に富んでいること,精度が高いことなどの特徴があるので、最近広く用いられている。また,画像処理用の専用処理装置を用いて高速化を図ることも行われている。
ディジタル画像処理は,1960年代の初めころから当時の中型・大型コンピューターを使用して,光学的文字読取装置(OCR),医用画像,物体認識,宇宙探査機からの画像の強調などの各方面で研究が始められた。70年代に入り,半導体技術の進歩によりミニコンピューターが普及し,これを中心とした画像処理システムが広く用いられるようになった。画像処理の実用化の面では,72年に発表されたCT(computed tomography)装置(CT検査)は,鮮明な断層像を提供するものとして急速に普及した。同年打ち上げられた資源衛星もリモートセンシングにおける画像処理が広く行われる契機となった。さらに,70年代の後半になると,半導体デバイスの進歩により,メモリー素子の集積度の向上とコストダウンがおこったが,これは大量なデータを処理する画像処理にとって望ましい方向であり,マイクロコンピューターの普及と相まって,画像処理用専用プロセッサーの開発を促すとともに,各方面でのディジタル画像処理の実用化が試みられるようになった。
画像処理の目的としては,画像の変換,計測,パターン認識,画像の発生に分けられる。画像の変換は,画像に対して階調補正,点演算,近傍処理,幾何学的処理,テクスチャー解析,フィルターリング,二次元変換,線や輪郭の抽出,領域分割などの処理を施し,画像として出力する。これらを組み合わせて画像の強調,画像の復元も行える。この処理は計測,パターン認識の前処理としても用いられる。計測は,画像の中から対象物を抽出し,その個数,寸法,面積などの計測を行う処理で,出力は記述データとなる。パターン認識は,画像を処理して対象物を抽出し,その特徴から分類を行うが,画像のパターン認識では,人間の優れたパターン認識と同等な能力を画像処理に求めることは,難しい場合が多い。画像の発生は,画像もしくは記述データの入力を処理して画像として出力する。コンピューターグラフィックスの分野と近づいている。
画像処理の応用分野は多岐にわたっている。(1)宇宙観測像 宇宙探査機からの月,火星,水星,木星,土星などの画像を見やすくする。1960年代中ごろから始められ,おもに画像強調を目的とする。(2)医用画像 シンチグラム,CT,X線像,顕微鏡像,超音波画像,サーモグラフィー,内視鏡画像など対象も広い。シンチグラムの処理は広く行われ,CTスキャンは画像処理の実用化したものの中では最も大きい。白血球の分類,子宮癌のスクリーニングは,実用の域に達している。(3)リモートセンシング 航空機や資源衛星,気象衛星などの衛星からのデータの補正,地図化には画像処理が活用されている。(4)産業応用 非破壊検査,目視検査,部品の認識,ロボットの眼として実用に供せられ,人間の代行をさせる目的が多く,高速性が要求される。今後個々の目的に適した装置の開発が進むであろう。(5)通信 ファクシミリ,テレビジョン,静止画などのデータ圧縮。(6)画像の発生 アニメーション,フライトシミュレーターなどへの利用。(7)デザイン 文字,織物,服飾,写真,印刷など画像処理システムの普及とともに発展する分野である。(8)個人の識別 顔,指紋,印鑑など。そのほか,文字認識ロボット,コンピューターグラフィックスとも密接な関係がある。
執筆者:高木 幹雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
テレビ映像、写真、図面などの視覚情報を、機械で処理すること。画像のなかに特定の対象が存在するかどうかを判定したり、大きさ、形状、色調などの特徴量を計測して元の対象の状態を推定したりするために行う。解析・認識的側面に重点を置くか、計測的側面に重点を置くかなど、処理の目的によって、画像認識、画像理解、画像計測などとよぶこともある。画像理解は、最終的には、与えられた画像に関する質問に対して機械が答えられるようにしようとするもので、技術的にはもっとも困難な問題である。このほかにデータ量を小さくして蓄積や通信の際の負担を減らすための画像圧縮、不鮮明な画像を見やすくするための画像鮮明化などの処理もある。
広義の画像処理には、計算やシミュレーションの結果とか、測定データなどを、理解しやすい画像の形で表現する処理も含める。コンピュータを用いた設計システムなどで広く用いられているコンピュータ・グラフィクス技術や、医療におけるX線CT像の合成などもその例である。
このような画像を合成する技術は、与えられた画像を修正したり解析したりする操作のいわば逆操作で、最初のうちはそれぞれが独自に発展してきたが、その応用領域が広がるにしたがって、両者の関係は密なものとなってきた。たとえば、与えられた写真のなかから特定の部分を除去したり、別の写真の一部をはり合わせたり、コンピュータで合成した画像を挿入したりすることによって、新しい画像をつくりだすことが可能となった。これは、いわば画像の編集操作であり、このためのシステムは光学暗室に対比して、電子暗室とよばれることもある。
[棟上昭男]
動いている対象を取り扱う技術で、この場合にも解析の問題と合成の問題が存在する。解析の場合は、時系列画像の各こまの間で、対応する部分をみいだす操作がもっとも重要である。動画の作成に関しては、与えられた二つの時点の画像から、その中間の時点の絵を自動的に合成し、全体として自然な動きの動画を機械につくらせる一種の内挿処理のような操作や、適切なモデルに基づいて種々の状況における情景を実時間で合成する技術などが重要である。後者は、飛行機の操縦訓練シミュレーターなどに利用されている。
[棟上昭男]
一般には、光学像をなんらかの電気信号に変換し、その信号を処理することによって画像処理を行う。画像を合成する場合にも、その元となるデータを電気信号に変換し、さらにその信号をブラウン管などによって光学像に変換する。
画像を電気信号に変換して入力するために用いられるのが画像入力装置で、テレビカメラのように撮像素子を用いるもの、機械式走査により1点ごとの明るさを求めるものなど、種々のものが用途に応じて用いられる。
画像信号の処理は、アナログ演算回路によって行われる場合もあるが、通常は信号を数値データに変換し、デジタル的に行う。元の画像に直接対応する画像を扱う段階では、画像は縦横それぞれ500点とか1000点といった格子点上にサンプルされた数値の配列の形で表現される。そのため、データ量が非常に大きくなり、画像処理に適した専用処理装置を利用する場合も多い。
[棟上昭男]
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