リモートセンシング(読み)りもーとせんしんぐ(その他表記)remote sensing

翻訳|remote sensing

デジタル大辞泉 「リモートセンシング」の意味・読み・例文・類語

リモート‐センシング(remote sensing)

人工衛星や飛行機などにより、遠く離れた対象の観測を行うこと。主に、地上から反射・放射される種々の波長の電磁波を測定し、コンピューターで処理して地表の状態を映像としてとらえることをさす。遠隔測定遠隔計測遠隔探査リモセン

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「リモートセンシング」の意味・わかりやすい解説

リモート・センシング
りもーとせんしんぐ
remote sensing

物体に触れることなくその物体の種類や状態を調べる技術で、一般に、人工衛星や航空機に搭載されたセンサーで地球を観測し、地球の環境状態を調べることに用いられる。遠隔探査または隔測などの訳語がある。あらゆる物質は、その状態に応じてさまざまな波長の電磁波を反射または放射している。各種のセンサーを使って、物体から反射または放射される電磁波を観測し、間接的にその物体を調べることがリモートセンシングの基本原理である。われわれは、通常、人の顔を見て「顔色悪いね。体調、大丈夫?」などというが、これは、われわれの目というセンサーが、相手の顔色を検知し、その色合いから相手の体調を推測していることになる。つまりわれわれは日常的に「リモート・センシング」をしているということができる。

[長 幸平 2025年7月17日]

語源・沿革

リモート・センシングの起源は、1858年にフランス人の写真家ナダールが熱気球から行った航空写真の撮影だといわれている。その後、凧(たこ)やハトを使った写真撮影が行われるようになり、1909年にはライト兄弟の兄、ウィルバーWilbur Wright(1867―1912)が航空機から地上を撮影したという記録がある。リモート・センシングという用語は、1950年代にアメリカ海軍調査局(ONR:Office of Naval Research)の地理学者プルーイットEvelyn Pruitt(1918―2000)が多波長カメラ、赤外フィルムや写真以外のスキャナーを用いた新しい撮像技術を「remote sensing」と表現したことに由来するといわれている。その後、1960年代初頭に、ONRが取りまとめた白書にこの名称が明記され、以後、アメリカで徐々にこの用語が広まっていった。しかし、リモート・センシングという用語が世界的に知られるようになったきっかけは、1972年にNASA(ナサ)(アメリカ航空宇宙局)が打ち上げた地球観測衛星ランドサット(Landsat。打上げ時の名前は地球資源技術衛星ERTS(アーツ):Earth Resources Technology Satelliteであったが、後に改名)1号の登場である。この衛星に搭載されていた可視域2、近赤外域2の合計四つの波長帯で観測する多波長放射計(MSS:Multi Spectral Scanner)は、当時としては画期的な約80メートルの空間分解能(約80メートル×80メートルの領域を1点として観測する能力。空間分解能の数値が小さいほど、地上の細かな状況を識別することができる)を有していた。宇宙から観測された世界各地のランドサット衛星画像は資源、農業、林業、環境などのモニタリングにきわめて有効なことが明らかになり、世界中でリモート・センシングの研究が精力的に行われるようになった。

 日本では1970年(昭和45)、科学技術庁(現、文部科学省)にERTS計画に参加する準備として、資源技術衛星データ判読技術検討委員会が設立された。引き続き1973年には総理大臣任命の資源調査会から勧告28号「地球資源隔測の推進構想」が出され、このときに「リモート・センシング」の日本語訳として「隔測」という新語が採用された。ランドサットデータの利用が可能になると、国内でも大学や研究機関などでリモート・センシングの研究が行われるようになった。リモート・センシング普及のため、1975年には財団法人リモート・センシング技術センター、1981年には日本リモートセンシング学会が設立された。また、リモート・センシングは写真測量技術が基になっているため、日本写真測量学会では以前からリモート・センシングの研究に取り組んでおり、その学会誌名は1975年から「写真測量とリモートセンシング」となっている。

[長 幸平 2025年7月17日]

観測方法

一般に、地表面の草地、森林、水域といった観測対象は、電磁波に関してそれぞれ特有の反射、放射特性をもっている。たとえば、芝生が緑に見えるのは、緑の波長帯の光(電磁波)を強く反射しているからである。リモート・センシングでは、おもに太陽光を光源とし、地表面で反射または放射された電磁波を衛星や航空機に搭載されたセンサーで観測して地表面の状態を推定している。観測に使用される電磁波は、可視域(約400~700ナノメートル)から、近赤外域(約700~1500ナノメートル)、中間~遠赤外域(約0.0015~1ミリメートル)、マイクロ波域(約1ミリメートル~80センチメートル)にわたる。また、特殊な例として、オゾン層などの観測には紫外線(約300~400ナノメートル)も用いられている。しかし、地表面とセンサーの間に存在する大気を通過する間に電磁波は大気中の水蒸気、炭酸ガス、酸素などによって、特定の波長帯で大きく吸収される。このため、リモート・センシングでは、観測対象物の反射・放射特性だけでなく、大気の透過・散乱特性も考慮して、観測波長帯を選定する必要がある。

 リモート・センシングの観測機器(センサー)は、受動型センサーと能動型センサーに大別できる。受動型センサーは、太陽から放射され、地上の対象物で反射された電磁波、または太陽に関係なく対象物から放射された電磁波(熱放射など)を観測する。地表から反射または放射された可視域から熱赤外域までの電磁波を複数の波長帯に分けて観測する分光放射計や、地上から放射されるマイクロ波を観測するマイクロ波放射計は受動型センサーである。一方、能動型センサーは、センサー自身が電磁波を放射し、地上の対象物から反射される電磁波を観測する。自分でレーザー光を放射し、その対象物からの反射光を観測することで、対象物までの距離や大気中の微量成分を計測するライダー(Lidar)や、自分で電波を発射してその反射波を観測するマイクロ波高度計(Altimeter)や合成開口レーダー(SAR(サー):Synthetic Aperture Radar)は、能動型センサーである。

 各種のセンサーを搭載した衛星や航空機などの移動体を、リモート・センシングではプラットフォームとよぶ。2010年代にはカメラを搭載した無人航空機(ドローン)の普及が進み、ドローンもリモート・センシングの重要なプラットフォームの一つとなりつつある。

[長 幸平 2025年7月17日]

リモート・センシング衛星

リモート・センシング用の観測センサーを搭載した人工衛星をリモート・センシング衛星、または地球観測衛星とよぶ。リモート・センシング衛星としてもっとも有名なのは、前述のアメリカの地球観測衛星「ランドサット」シリーズで、1972年に1号が打ち上げられてからシリーズ化され、2021年の9号機まで打ち上げられ、データは世界中で直接受信・利用されている。次に有名なのがフランスの人工衛星「スポット(SPOT)」シリーズで、1986年に1号が打ち上げられてから2014年の7号機まで打ち上げられ、ランドサットと同様に世界中で利用されてきた。日本では1987年(昭和62)に「MOS-1(モスワン)」(海洋観測衛星「もも1号」)が打ち上げられて以来、さまざまなリモート・センシング衛星が打ち上げられている。1977年に1号機が打ち上げられた気象衛星「ひまわり」もリモート・センシング衛星の一種であるが、当初はアメリカのメーカーが「ひまわり」を開発していたため、日本初の国産リモート・センシング衛星は「MOS-1」ということになっている。

 当初、リモート・センシング衛星を所有していたのはアメリカ、フランス、日本、ESA(イーサ)(ヨーロッパ宇宙機関)、旧ソ連だけであったが、その後、カナダ、インド、中国、ブラジルをはじめ、世界各国でリモート・センシング衛星を開発・打上げ・運用するようになった。光学センサーの空間分解能も徐々に向上し、2021年に打ち上げられたフランスのエアバス・ディフェンス・アンド・スペース社Airbus Defence and Space SASのプレアデス・ネオPléiades Neo3号は、空間分解能30センチメートルを達成している。

 かつて、リモート・センシング衛星は重量3トン以上の大型衛星が主流であったが、21世紀に入って急速に小型化が進んだ。2015年にアメリカのプラネット・ラブズ社Planet Labs PBCが打上げた「Dove(ドーブ)衛星」の重量はわずか5キログラムである。こうした小型化に伴い、打ち上げられる衛星の数も年々増加しており、2015年に運用されていたリモート・センシング衛星の数は333機であったが、2023年には4倍近い1192機に達している。

 リモート・センシング衛星が地球を周回するおもな軌道は、静止軌道と極軌道に大別できる。静止軌道は、赤道上空3万6000キロメートルを地球の自転周期と同じ周期で周回する軌道で、地球からは衛星は静止して見えるため、その名前がある。気象衛星ひまわりは静止軌道から太平洋全域を常時観測している。赤道上空には、国際連合(国連)の世界気象機関(WMO)の枠組みのもと、日本、アメリカ、ヨーロッパ、インドなどの静止気象衛星が配置され、全球を常時観測している。一方、極軌道は、北極と南極を結ぶ軌道で、衛星は高度約500~900キロメートルで地球を周回している。地球は北極と南極を結ぶ地軸を中心に横方向に自転するので、衛星が縦方向に周回するたびに違う地域を観測することができ、やがて元の場所に戻ってくることで、全球観測が可能となる。多くの地球観測衛星は、極軌道を周回している。

[長 幸平 2025年7月17日]

データ処理

衛星に搭載されている観測用センサーで観測されたデータは、デジタル信号に変換されて地上受信局に送信される。受信局で受信される信号には幾何学的なゆがみなどが含まれている。受信したデータはそのまま未補正データとして保管され、ゆがみは次のデータ処理の段階で補正される。さらに、一般に使われている地図の投影法にあわせた投影変換などが施される。処理を終えたデータは、一般の利用者がそれぞれの計算機で解析処理が行えるように、数値データとしてDVDやHDDなどの記録媒体に記録して配布される。インターネットの高速化に伴い、オンラインで提供されることも多くなった。写真の提供を希望する利用者には、印画紙などに印刷して配布される。海面水温や水蒸気量のような物理量を求める場合には、計測しようとする電磁波エネルギーが大気中を通ってくる間に被る減衰などの影響を除去・削減する補正処理が必要である。また、衛星画像を地図などに重ね合わせるには、幾何補正が必要である。かつては、専門的なソフトウェアがなければ、こうした処理・解析が行えなかったが、徐々に安価なソフトウェアパッケージが市販され、かつ、JAXA(ジャクサ)(宇宙航空研究開発機構)、NASA、ESAなどの宇宙機関がインターネット上でデータを簡便に入手・解析できるポータルサイトなどを開設するようになり、リモート・センシングの利用の裾野(すその)は広がっている。

[長 幸平 2025年7月17日]

リモート・センシングの利用

リモート・センシングの利用は、多方面に及ぶ。たとえば建設分野では、道路・鉄道・ダム・港湾などの建設や管理、地図作成などに使われ、国土情報としての土地利用図の作成に利用されている。農業・林業分野では、作付把握、収穫量予測、病虫害監視などに広く使われ、世界規模での調査に有効とされている。また、鉱物・エネルギー資源分野では、地質構造から、資源の存在有望地域を世界規模で探査するために使われている。漁業の分野では、衛星が観測した広域な海面水温分布画像が、各漁船の漁場探査に欠かせない情報となっている。地球環境変動もリモート・センシングの重要な観測対象である。地球的規模での森林の減少や砂漠化などの調査にも広く使われており、アマゾンの大規模な森林伐採はランドサット衛星などの画像から明らかになった。オゾンホールの拡大傾向を画像化したのは、NASAの衛星に搭載された紫外線センサーである。また、1978年に始まった衛星搭載マイクロ波放射計による観測は、約40年を超える継続観測で北極海の夏の海氷分布面積が半減したことを明らかにし、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が地球温暖化を断定する根拠の一つとなっている。火山の噴火、洪水、地震、津波などの災害監視でも、衛星観測は被害状況の把握に不可欠な存在となっている。2011年(平成23)の東日本大震災の際には、世界各国から5000シーンを超える衛星画像が日本に提供された。環境問題に国境がないように、リモート・センシングにも国境はない。各国が連携して地球観測衛星を活用し、地球環境変動監視や再生資源の有効利用に役だてていくことが求められている。

[長 幸平 2025年7月17日]

『和達清夫他編・著『リモートセンシング』(1976・朝倉書店)』『土屋清編著『リモートセンシング概論』(1990・朝倉書店)』『日本リモートセンシング研究会編『図解リモートセンシング』改訂2版(2004・日本測量協会)』『高橋陪夫、島田政信他著「東日本大震災における宇宙航空研究開発機構の取組み」(『写真測量とリモートセンシング』50巻4号所収・2011・日本写真測量学会)』『日本リモートセンシング学会編『リモートセンシング事典』(2022・丸善出版)』『日本リモートセンシング学会編『基礎からわかるリモートセンシング』第2版(2025・理工図書)』『J. Fussell, et al.On Defining Remote Sensing (in Photogrammetric Engineering and Remote Sensing, Vol.52, No.9, pp.1507-1511, 1986, American Society for Photogrammetry and Remote Sensing)』

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改訂新版 世界大百科事典 「リモートセンシング」の意味・わかりやすい解説

リモートセンシング
remote sensing

主として電磁波を利用して遠隔点より対象物を非接触で調べる技術。遠隔探査ともいい,地球資源,環境,海洋などの調査に用いられる。一般に対象物を非接触で調べる方法にはいくつかあるが,原理的にはいずれも対象に関係した物理的・化学的現象などを観測して,その性質を間接的に調べるものである。物理現象を利用する物理探査は昔から広く用いられてきたが,地球の重力場,磁力場を観測するもの,弾性波を用いるものなどいろいろな方法がある。電磁波を用いているリモートセンシングはこれとは別に,空中写真技術から出発した比較的新しい探査技術である。第2次大戦中,偵察あるいは測量の目的で航空機から長焦点のカメラで精度のよい写真を撮る技術が進歩したが,戦後この技術は民生用としても広く写真測量,写真地質判読などのため利用されるようになった。これは,物理的には太陽光,すなわち可視域(0.4~0.7μmの波長)の電磁波が対象物から反射・散乱されてくるのをカメラという電磁波計測装置で観測しているもので,いわばカメラはセンサーであり,フィルムはデータの記憶媒体,航空機はセンサー搭載のプラットフォームである。可視光より長波長の近赤外線にも感ずるフィルムを使えば,人間の目で見えないスペクトル帯域の情報が得られる(図1に電磁波のスペクトル帯域を,図2に地表物質の反射スペクトル特性を示す)。例えば,植物が水分を多く含むときと,そうでないときでは近赤外域のスペクトル特性が違うので区別できる(図3)。このように可視域の写真の利用価値は帯域を広げることによりいっそう増加する。これをさらに進めたのがリモートセンシングといえる。

 現在日本の陸域は国土地理院あるいは民間の手により組織的に撮影されており,多くの地域では重複撮影(例えば60%)された立体写真が作られている。これによって地表面の凹凸,標高は能率よく測量できる。さらに可視ならびに近赤外の帯域をそれぞれ異なった色のフィルターを通して複数レンズのカメラ,すなわちマルチスペクトルカメラで分光撮影すれば,後にこれらを組み合わせて対象物を光学的にあるいは電子光学的に処理,強調することもできる。1969年にはNASA(ナサ)(アメリカ航空宇宙局)がアポロ9号を用いてマルチバンドカメラによる地球の写真を撮っている。また73年にはスカイラブによってもマルチスペクトル撮影の実験がなされた。空中からの写真利用がリモートセンシングという新しい名で呼ばれ,広く人々の関心を集めるようになったのは,宇宙からの地球の写真が世に出るようになってからといえる。宇宙開発,人工衛星,画像処理,コンピューターなど,いわゆる高度技術が新たな地球観をわれわれに与えてくれるようになり,このような背景からリモートセンシングは新鮮な響きをもって迎えられた。グラウンドトゥルースground truthということばも現れたが,これは空中からのスペクトルデータを判読するには地表物体の一般的特徴,すなわちグラウンドトゥルースをあらかじめ知っている必要があるからで,例えば,森林,海,岩石などの地表物質のスペクトル特性を知っていれば,高空から得られるスペクトルデータの識別をすることができる。このように宇宙開発を契機として,空中写真の利用技術はまったく新しい転機を迎えた。

センサーもフィルムを使うカメラだけではなく,電子式の走査型放射計などの高度なセンサーが用いられるようになった。例えば,画像化システムであるマルチスペクトルスキャナーmulti spectral scanner(MSSと略記)あるいはマイクロ波レーダーシステムにより作られる映像は多くの新しい可能性を開いた。これによって,フィルムに感じる長波長の近赤外,熱赤外,そしてマイクロ波域へと,観測できる帯域は飛躍的に広がった。とくにレーダーリモートセンシングは雲に影響されない全天候型で,昼夜を問わず用いられるので可視域とは違った新しい応用がある。また熱赤外データは地球表面の熱的特徴の解明に役だち,可視・近赤外域とともに気象,海洋など多くの分野で利用できる。例えば,気象衛星からの広域データは天気予報以外にも広く使われている。日本のGMS(geostationary meteorological satelliteの略)や世界の各気象観測用静止衛星は地表面を3万6000kmの高度から広範囲を観測するもので,全世界の雲の分布や気象データを得る一つの国際システムといえる。しかし技術的にはこの種の衛星は地球表面を広域観測するため分解能を犠牲にしている。

 一方,陸域観測用衛星では分解能が生命で,緻密(ちみつ)な地表観測が要求される。NASAによる陸域衛星であるランドサット(LANDSAT)計画は1972年の1号打上げにより開始された。用いられたセンサーMSSは4バンド(0.4~1.1μmを4分割),地表分解能80mで,その映像は約900kmの超高度からとは思えないほど鮮明であった。このランドサットが宇宙リモートセンシングの原点といえ,最も典型的にリモートセンシング技術を物語っている。すなわち,リモートセンシングには対象物を観測するセンサーがまず必要であるが,同時にセンサーを搭載するプラットフォーム,データを収録するシステムが必要で,場合によっては大規模な地球規模での観測システムが必要となる。さらにこのような全体的なデータ収集のシステムに加えて,データを処理,解析するデータ利用システムがなければならない。ランドサット衛星は地球を組織的にモニターするプラットフォームであり,高度約900kmの円軌道上を太陽と同期しつつ北極,南極を通り,18日で再び元にもどる(図4)。この軌道は太陽同期軌道と呼ばれ,衛星は地球上の各点をつねに同一地方時に通過する。これは多くの目的につごうがよく,また両極を通るので地球全表面がカバーできる。その後,太陽同期軌道は陸域衛星用の標準軌道となった。

 一方ランドサットではセンサーからの電気信号は地表の受信局で受信され,コンピューターテープに収納される。したがってコンピューターを用いて各種のデータ処理が可能で,いくつかのスペクトルバンドを組み合わせて解析につごうのよい画像を作ることができ,スペクトル特性の差から地表物質を分類することも可能である。図5に示すように,各バンドのセンサーはスペクトル強度を観測しているから,バンドごとの値を座標軸にとり多次元空間内で,得られた映像を構成する各画像要素すなわち画素をそれぞれ点で配置させれば,その多くの点の分布状況から地表の物質をスペクトル的に分類できる。一つの集団を同一物質と見るのが地表物質を分類する原理である。ランドサットでは地表185km幅を走査しつつ北から南へ進むが,その後分解能80mは30mに向上し,バンド数も4から7に増加した。

 近年とくに地表分解能はいっそう緻密なものが要求され,20,10m級のものが実用に供されるようになった。反面,分解能が向上すれば同じ面積当りのデータ量が増し,データ処理の負担が増す。したがってコンピューターの高速,大型化が必要であり,特殊な画像処理システムも必要になる。

 衛星センサーによって地球規模で撮られるデータでは,利用者へのデータ配布システムがきわめて重要である。ランドサットの場合はアメリカは政府機関を新設し,全世界にコンピューターテープ,陽・陰画フィルムを組織的に頒布するシステムを用意した。これがその後のリモートセンシングの発展にきわめて役にたった。現在では日本も含め全世界にいくつかの衛星データの受信センターが設置され,それぞれの国と周辺地域のデータは直接受信処理されている。すなわち衛星データの収集には国際システムが重要であることをランドサットは示した。

一方,データの利用は地表物質の認識,動的な変化のモニターなど多岐にわたるが,目的によりリモートセンシングデータの解析方法は異なる。例えば農業を目的とする場合,作物ごとのスペクトル特性の差に着目するのみでなく,生育のパターンを時系列的にとらえる必要がある。鉱物資源の探査のためには岩質,断層,変質帯の分布などが重要であるが,動的な変化は地質の性格上重要でない。このようにデータの処理,解析の方法はそれぞれの分野特有の問題と考えるべきで,リモートセンシングデータは他の資料とともに用いる一つの判断資料を提供する。また有効なリモートセンシングデータの種類も応用分野によって異なり,太陽光の反射を調べる可視・近赤外域は最も重要な汎用(はんよう)スペクトル帯域といえる。熱赤外域は地表面の放射温度を与えるので,陸域での火山・地温調査,あるいはより一般的な用途のほか,海水塊,海流の調査にも有効である。これらは自然発生的な電磁波を用いるので“受動的”リモートセンシングと呼ばれている。一方はるかに長波長のマイクロ波レーダーは“能動的”なリモートセンシングで,その映像は地形,地球表面の起伏をよく表現するので,この特徴を生かした応用がいろいろ考えられている。地球表面の起伏は重複画像による立体映像でも調べられるが,マイクロ波レーダーの散乱はこれと違った情報を与える。例えば,地表面の凹凸である地形による地質判読は重要な応用であり,また海面の波浪からのマイクロ波の散乱データは間接的に風速についての知識を与える。

以上大別して可視・近赤外,熱赤外,マイクロ波域の3帯域が主体であるが,その他特殊な目的には特殊なリモートセンシングも考えられる。例えば,ある種のレーザー光の蛍光反応から物質を識別するものや,マイクロ波の自然放射を調べる非レーダーリモートセンシングもある。一方,ひじょうに高周波数の電磁波であるγ線は放射性物質の探査に有効で,物理探査として以前より応用されている。反面はるかに長い波長域,例えば102km程度の波長では能動的な電磁探査法もある。これは地下残部102m程度以下の導電率分布を調べるもので,金属鉱床探査などに用いられている。また重力場,磁力場を衛星を用いて地球物理学的規模で宇宙から調べることも行われている。技術的に物理探査と呼ばれるものは本来地下を調べるためのものだが,可視域-マイクロ波のきわめて短い波長の電磁波を用いるリモートセンシングでは,基本的に“地表面”(“土地被覆”)を調べている。リモートセンシングにより地下の地質構造がわかるのは地表の顔から地下を推論する結果である。対象物の“上面”のみを見る通常のリモートセンシングは,ここに一つの技術的限界がある。しかし,このことのためにリモートセンシングは広域高能率の探査を可能にしているのであり,リモートセンシングを広域概査手段と考え,目的によく合った利用をすべきである。

今後リモートセンサーとしても優秀な半導体を利用した高度のものが用いられるであろうし,衛星搭載用の合成開口レーダーsynthetic aperture radar(SARと略記)も進歩するであろう。これらが高度の情報処理技術,宇宙技術と結びつき,先端的な技術体系をつくると考えられる。しかし,これらは基本的には地球の資源,環境あるいは自然そのものを調べるなどの目的追求のための“道具”である。最も重要なことは目的追求のしかたであり,そのために最も適したシステムを考えることである。国境を無視する地球規模での衛星リモートセンシングでは,その性格上国際的視野をもつことがひじょうにたいせつである。地球をこのように組織的に調べる方法は衛星リモートセンシングしかない。一方,リモートセンシング技術は地球を調べる目的以外にも多くの応用があり,非接触で対象物を調べる特徴を生かして広く活用されている。工業・医療リモートセンシングなどがそれであり,さらに一般的な非接触計測の多くはリモートセンシング的であるといえる。
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百科事典マイペディア 「リモートセンシング」の意味・わかりやすい解説

リモートセンシング

物体から反射または放射される電磁波を利用し,遠隔位置からそれらの物体の種類や状態などを識別する技術。すべての物体は,その物体特有の反射特性をもち,環境や条件が違えば同じ物体でも反射特性が違ってくる。したがって,反射特性がわかれば,その物体が何であるか,どのような状態にあるかを知ることができる。具体的には人工衛星や航空機で,種々の電磁波を使って地表のマルチスペクトル写真を撮影し,その写真を解析して物体を識別している。たとえば,健康な植物の緑は赤外域で非常に強い反射を示し,病害虫や公害におかされると赤外域の反射は低下し赤バンドの反射が強くなる。したがって,赤外域の写真と赤バンドの写真を撮影して調べると植物の活力度が判別できる。 リモートセンシングを目的とした人工衛星を地球探査衛星,資源探査衛星などと呼んでおり,米国のNASA(ナサ)が1972年から打上げを行っているランドサット,フランスのSPOTのシリーズが代表的。日本でも1992年に〈ふよう〉の打上げに成功している。またリモートセンシングを利用して遺跡などを発見しようとする宇宙考古学も行われはじめた。
→関連項目画像処理空中写真コンピューターグラフィックス

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「リモートセンシング」の意味・わかりやすい解説

リモート・センシング
remote sensing

隔測ともいう。可視光線外の波長域の放射線または地表や水中からの反射波を探知して,面的広がりのある情報を得る方法。たとえば,水面の温度分布を熱線を感知する方法で調べる熱線写真,レーダに用いる波長の電磁波によって得られるレーダ写真,赤外線を赤く発色させる偽赤外カラー写真,赤外カラー写真,音響測深による水底からの反射音波を映像化したもの,波長帯ごとにフィルタなどで分離し,それらを特別の感光剤で映像化した写真の組としてマルチスペクトル写真,衛星船のテレビカメラによる映像をデジタル化して,地上の受信機で受けてから写真に仕上げる月や火星の空中写真などがある。応用分野は広く,農業,植生,地形,地質,土地利用,海洋,気象,考古学,医学などの分野にわたっており,地球資源の有効利用や環境保全などのために,重要な役割を果している。

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化学辞典 第2版 「リモートセンシング」の解説

リモートセンシング
リモートセンシング
remote sensing

離れたところから,直接触れずに,物質の大きさや性質またはそれが置かれた状況を読みとる技術.たとえば,地球観測衛星に搭載されたセンサーを使って,地球の植生分布,火山活動,海面の温度などの情報を得るのに使われる.この場合,地表から反射や散乱された太陽光を見る光学センサー(受動型センサー)や,5.3 GHz のマイクロ波のレーダーを発射し,地表からの反射や散乱をみるマイクロ波センサー(能動型センサー)が使われている.また,火山活動を常時モニターするために,火山ガスの濃度,温度,pHなどのセンサーによるリモートセンシングなどがある.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内のリモートセンシングの言及

【海洋開発】より

…これらの措置と企業による海底石油・ガス開発技術の進歩とにより,アメリカの科学技術は大きく進み世界のリーダーとしての実力をそなえるようになった。特に注目すべき点は,多くの海洋調査船をもつほか,ダイビングや潜水船,無人機などによる海中活動技術,水中超音波技術とその応用機器,低照度水中写真技術,宇宙技術との組合せによるリモートセンシング技術などの分野である。
[その他の先進国の動き]
 フランスはJ.Y.クストーによる潜水技術,海中居住実験,潜水船などの分野において先駆的開発技術をもっているが,1967年国立海洋開発センター(CNEXO,Centre National pour l’Exploitation des Océans)を設立し,広く海洋科学技術の開発に努め,アメリカとの協同調査を行い,東太平洋において多くの熱水鉱床の発見に大きく寄与した。…

【写真】より

…写真感光材料工業の生産量から見ると,近年の先進国では一般撮影用フィルムよりも業務用およびX線用感光材料が多く製造され,生産金額では一般撮影用と業務用とが1:1に近くなっている。写真の用途の中で一般撮影に近いものとして航空写真,写真測量あるいは宇宙写真があるが,高度の宇宙空間から地表の写真を撮影する技術はリモートセンシングと呼ばれ,地球資源探査,気象観測,海洋や地表の汚染調査等に利用され,国際間の協力の下に業務が進められている。宇宙空間からの観測の場合,写真撮影とテレビジョン技術ならびに通信技術が総合されて画像が得られるので,電気信号を地上で受信して最終的に写真像を作る場合もある。…

※「リモートセンシング」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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