癌予防薬(読み)がんよぼうやく

百科事典マイペディア 「癌予防薬」の意味・わかりやすい解説

癌予防薬【がんよぼうやく】

(がん)になりやすい体質の人が,癌の発病を防ぐための薬のこと。西洋医学ではあまり実用化されていないが,制癌薬は副作用が大きく,癌の遺伝子治療は一般的ではないことから,予防薬の研究も進んでいる。 1997年9月,東京大学大学院薬学系研究科の武藤(たけとう)誠教授(遺伝学)らと,米国,カナダの合同グループは,大腸癌一種である家族性大腸腺腫(FAP)で,癌化を促す酵素の働きを抑える動物実験に成功した。 FAPは大腸に多くのポリープができて癌化する病気で,癌抑制遺伝子の異常によって起きる。武藤教授らは遺伝子操作でFAPを発症するマウスをつくり,大腸ポリープを観察すると,COX-2という酵素が大量に出ていた。そこで,このマウスにCOX-2の働きを抑える薬を8日間投与したところ,ポリープの数は15%まで減少した。副作用も特になく,臨床試験が順調に進めば,数年後に癌予防薬として使えると期待されている。 また,各種の代替療法にも癌予防の効果があるといわれている。京都薬科大学の木島孝夫教授らと昭和薬科大学のグループが行ったマウスの実験では,干したタンポポの根で乳癌の発症を遅らせることができた。木島教授らは,放っておけば30〜40週で必ず乳癌になる実験動物のマウスに,タンポポの根から抽出したエキスを入れたエサを与えたところ,10週間ほど乳癌の発生が遅くなったという。 このほか,アメリカ国立癌研究所によれば,タモキシフェンという薬剤で乳癌を45%予防できる。これに対して,1998年7月,英国イタリアの研究グループは〈効果がない〉とする試験結果を科学誌《ランセット》に発表した。アメリカ国立癌研究所は〈予防効果には確信がある〉と反論している。

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