白血球系細胞

内科学 第10版 「白血球系細胞」の解説

白血球系細胞(成熟血球の産生制御機構)

(3)白血球系細胞
 白血球は,CMPに由来する好中球,単球,好酸球,好塩基球,マスト細胞とCLPに由来するBリンパ球,Tリンパ球,NK細胞に分類される.
a.骨髄系白血球
 CMPからGMPが産生され,さらに,顆粒球・単球系前駆細胞(CFU-GM)となり,そこから単球系前駆細胞(CFU-M)と顆粒球系前駆細胞(CFU-G)が産生される(図14-2-1).CFU-MはM-CSFの作用を受けて単芽球になり,CFU-GはG-CSFにより骨髄芽球になる.
 骨髄芽球は形態的に同定できる最も幼若な顆粒球系細胞であり,前骨髄球,骨髄球,後骨髄球,桿状球,分節球へと成熟する.この過程では骨髄球までは増殖しながら成熟するが,後骨髄球以降は分裂能を失い成熟するのみである.成熟した好中球は直径10~15 μmの大きさとなる.通常の造血状態では,桿状球以降の顆粒球のみが末梢血に流出する.顆粒球系細胞の発生に最も重要な造血因子はG-CSFである.
 単球は直径13~22 μmの大型細胞で細胞質内に微細なアズール顆粒を有している.血中の単球は,組織へ移行し,その組織に適応したマクロファージ(肺胞マクロファージや肝Kupffer細胞など)となり,数カ月生存する.炎症部位に遊走し,体内に侵入した異物抗原)を貪食処理する.
 好酸球は,細胞表面のIgE受容体を介し免疫反応に関与し,その発生においてはIL-5が最も重要なサイトカインである.
 好塩基球とマスト細胞は,ともに細胞表面にIgEに対する高親和性受容体FcεR1を有し,種々の刺激で活性化されるとヒスタミンロイコトリエンを放出し,即時型(Ⅰ型)アレルギーや炎症反応を引き起こす.好塩基球は骨髄内で成熟し,その際の最も重要な造血因子はIL-3である.成熟好塩基球はおもに末梢血中に存在するが,増殖能はなく,その寿命は好中球同様に短い.一方,マスト細胞は前駆細胞の段階で骨髄から末梢血に移動し,組織に侵入後増殖してから分化する.マスト細胞は定着した組織により形質が異なり,結合組織マスト細胞,粘膜マスト細胞などとよばれ,健常人の末梢血中には通常見いだされない.
b.リンパ系白血球
 Tリンパ球は,胸腺にたどりついたCLPから発生し,胸腺内で分化する.CD4CD8細胞はヘルパー/インデューサー能をもち細胞性免疫の担い手である.ヘルパーT細胞は,IL-2やIFN-γなどを産生し細胞性免疫を増強するTh1細胞と,IL-4,IL-5,IL-6,IL-10などを産生し液性免疫を亢進させるTh2細胞に分類される.また,CD25CD4細胞は制御性T細胞として生体内で自己免疫反応を抑制している.
 骨髄内にとどまったCLPから発生したBリンパ球前駆細胞はIL-7,SCFなどの存在下でpro-B細胞からpre-B細胞へと分化する.pro-B細胞の段階では免疫グロブリン重鎖遺伝子の再構成が起こり,引き続きpre-B細胞の段階で軽鎖遺伝子の再構成が起こる.両者の再構成が終了すると免疫グロブリン分子の産生が可能となり細胞表面にIgM(sIgM)を発現する未熟B細胞となる.sIgM陽性B細胞は,体細胞変異とクラススイッチを起こし,細胞表面免疫グロブリンがIgMからIgG,IgAへと変化しメモリーB細胞になる.成熟Bリンパ球は末梢血中やリンパ節などの末梢リンパ組織に存在するが,IL-6などの作用により抗体産生細胞である形質細胞に分化すると骨髄へ戻る.
 ナチュラルキラー細胞(NK細胞)の分化過程の詳細は明らかではない.NK細胞はGiemsa染色ではLGL(large granular lymphocyte)の形態を示す.MHCの拘束を受けずに先天性免疫,自然免疫,さらに,癌細胞の傷害やウイルス感染細胞,移植片の排除を行う.[松村 到]
■文献
Abboud CN, Lichtman MA: Structure of the marrow and the hematopoietic microenvironment. In: Williams Hematology, 7th ed (Lichtman MA ed), pp35-72, McGraw-Hill, NY, 2006.
Dacie JV, Lewis SM: Practical Hematology, 7th ed, Churchill Livingstone, Edinburgh, 1991.
Kipps TJ: The lymphoid tissues. In: Williams Hematology, 7th ed (Lichtman MA ed), pp73-81, McGraw-Hill, NY, 2006.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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