目標による管理(読み)もくひょうによるかんり(英語表記)management by objectives

改訂新版 世界大百科事典 「目標による管理」の意味・わかりやすい解説

目標による管理 (もくひょうによるかんり)
management by objectives

組織全体の目標や各部門の目標を設定するだけでなく,これら全体目標や部門目標を達成するために個々の管理者や仕事の担当者が,各人が分担する仕事の範囲内で個人目標をみずから具体的に設定して,その目標達成を中心に自律的に仕事を遂行していくという考え方あるいは制度(しくみ)をいう。目標管理ともいい,経営管理の実際的な必要性から生まれたものであり,ドラッカーPeter Ferdinand Drucker(1909-2005)の〈目標(設定)と自己統制による管理〉の考え方に出発点があるといわれている。

 組織が目標を設定することはあたりまえのことであるが,ここでは一定期間における全体目標から部門目標そして個人目標までが,明確な目標の連鎖体系として設定されることが強調される。しかし達成すべき成果を各人に対して目標として割り当てると,上から与えられたノルマになってしまう可能性がある。そうならないためには,目標設定の際の自主性とその達成過程での大幅な自由裁量が不可欠となる。そうはいってもまったく自由になされるわけではなく,各人が分担した仕事の範囲内で,全体目標あるいは部門目標実現のために何をなすべきかということが基礎になる。このことからもわかるように,組織全体に職務権限)の配分委譲)が体系的になされ,各人の職務(責任)が明確になっていることが前提となる。ノルマではない目標を主体的に設定し自己統制することにより,各人の意欲も高まり創意工夫や能力発揮,能力開発の機会ともなるのである。以上のように,目標による管理は組織目標と個人目標を結びつけることにより,効率的な組織運営と同時に各人の自発的意欲や創意を確保することをねらいとしている。日本では1960年代の半ばに業績向上,能力開発,モラール向上などを目的としていくつかの企業で導入され,しだいに普及した。
経営・経営管理
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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