デジタル大辞泉
「眺」の意味・読み・例文・類語
ちょう【眺】[漢字項目]
[常用漢字] [音]チョウ(テウ)(呉)(漢) [訓]ながめる
遠く見渡す。ながめる。「眺望」
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
なが・める【眺】
〘他マ下一〙 なが・む 〘他マ下二〙
①
物思いなどに沈みながら、ある一点や
戸外などをぼんやりと見やる。
※
古今(905‐914)羇旅・四一一・詞書「しばし河のほとりにおりゐて、思ひやればかぎりなく遠くも来にける哉と思ひわびて、ながめをるに」
② ぼんやりと見やりながら、物思いにふける。
※伊勢物語(10C前)二一「思ふかひなき世なりけり年月を
あだにちぎりて我や住まひし、といひてながめ居り」
③ なにもしないで、ただぼんやりと見ている。
※
太平記(14C後)八「余
(あまり)にながめ居て、
御方(みかた)の弱り為
(し)出したらんも由
(よし)なし」
④ 感情をこめて、あるものを見つめる。また、景色や美しいものなどを、観賞的な態度で見やる。
※車屋本
謡曲・車僧(1514頃)「しばらく車を立て
四方のけしきをながめうずるにて候」
⑤ 遠くにあるものや、ある距離をおいたところを見やる。
⑥ よくよく見つめる。つくづく見つめる。
※暴夜物語(1875)〈永峰秀樹訳〉
漁夫の伝続「帝は
希代の
珍魚なりと暫く熟視
(ナガメ)玉ひしが」
ながめ【眺】
〘名〙
① (━する) つくづくと見つめて物思いにふけること。感情をこめ、または観賞的態度で見つめること。
和歌では、「
長雨」に掛けて用いることが多い。
※
古事記(712)中「天皇、其の他
(あだ)し女なることを知ろしめして、恒に長眼
(ながめ)を経令め、亦婚しもせずて、惚
(ものおも)はしめたまひき」
※古今(905‐914)春下・一一三「花の色はうつりにけりないた
づらに我身世にふるながめせしまに〈
小野小町〉」
② 見渡すこと。遠く見やること。また、その風景。眺望。
※六百番歌合(1193頃)春上・一一番「あまの原春とも見えぬ眺めかなこぞの
名残の雪の曙〈略〉此眺めかなといふ詞の近比見え侍る、未甘心覚え侍る」
③ なりかたち、特に、それがよいこと、美しいことをいう。また、見やるべき価値のあること。
※
浮世草子・好色一代男(1682)五「向ひの岸には〈略〉竿指のべて
石持(はぜ)釣風情詠
(ナガメ)也」
[語誌](1)動詞「ながむ」の連用形が
名詞化した語とも考えられるが、①の
挙例の「古事記」にみえる「長眼」などに発する語だとすると、先に
名詞「ながめ」があって、後にそれが
動詞化したものと考えるべきか。
(2)
平安時代には「ながめす」とサ変動詞の形でも用いられた。動詞「ながむ」「ながめす」が発達するにつれて視覚動詞化し、やがて視覚の対象が意識されるようになり、院政期以降、視覚行為自体、またはその対象を意味するようになって、「けしき」「風景」などの類義語となる。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報