着せる(読み)キセル

デジタル大辞泉 「着せる」の意味・読み・例文・類語

き・せる【着せる】

[動サ下一][文]き・す[サ下二]
衣服などを身につけさせる。「着物を―・せてもらう」
上からかぶせる。「銀台に金を―・せる」「歯にきぬを―・せぬ批評
他に押しつけ負わせる。こうむらせる。「罪を―・せる」「恩に―・せる」
上にのせる。置く。
くら―・せば命死なまし甲斐かひ黒駒」〈雄略紀・歌謡
打つ。たたく。
「馬取りの鼻捻はなねぢほどの棒もがな濡らせる人を―・せて腹癒ん」〈仮・仁勢物語・下〉
[下接句]石に布団は着せられず奥歯にきぬ着せる恩に着せるぎぬを着せる歯にきぬ着せぬ

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「着せる」の意味・読み・例文・類語

き・せる【着・著・被】

  1. 〘 他動詞 サ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]き・す 〘 他動詞 サ行下二段活用 〙
  2. 衣服などを身にまとわせる。着させる。
    1. [初出の実例]「一つ松 人にありせば 太刀佩(は)けましを きぬ岐勢(キセ)ましを」(出典古事記(712)中・歌謡)
    2. 「我もいそじの春秋をしる〈几董〉 汝にも頭巾着せうぞ古火桶〈蕪村〉」(出典:俳諧・此ほとり(1773)一夜四唫の巻)
  3. 物を肩や背などに載せる。置く。つける。
    1. [初出の実例]「ぬばたまの 甲斐の黒駒 鞍枳制(キセ)ば」(出典:日本書紀(720)雄略一三年九月・歌謡)
  4. 能面などをつけさせる。
    1. [初出の実例]「新座の楽屋八九歳の小童(わらは)に、猿の面をきせ」(出典:太平記(14C後)二七)
  5. 物に何かを包みかぶせる。包みおおう。また、鍍金する。
    1. [初出の実例]「竹の根柴などをかりて一盃きせて、それをやいて」(出典:玉塵抄(1563)二七)
  6. こうむらせる。受けさせる。負わせる。
    1. [初出の実例]「酒をめたときせて、船にえのらぬを、正体もないを」(出典:玉塵抄(1563)四〇)
    2. 「盗賊の汚名を着せたりした」(出典:ガトフ・フセグダア(1928)〈岩藤雪夫〉四)
  7. くらわす。打つ。たたく。
    1. [初出の実例]「今のは、みどもがあたまを、きせた心かと云」(出典:天理本狂言・文山立(室町末‐近世初))

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