石の花(読み)いしのはな(英語表記)Каменный цветок/Kamennïy tsvetok

日本大百科全書(ニッポニカ) 「石の花」の意味・わかりやすい解説

石の花
いしのはな
Каменный цветок/Kamennïy tsvetok

ソ連小説家P・バジョーフが故郷ウラル地方の民話伝説をもとに書き上げた『孔雀(くじゃく)石の小箱』(1939)のなかの代表的一編で、1943年にスターリン文学賞を受賞した。野山の花の美しさに勝る花を彫り上げたいという願いに取りつかれた若い石工のダニーラが、恋人懇願魔女誘惑を振り切り、ついに壮麗な石の花をつくりあげるというストーリー幻想と現実が交錯する豊かな詩情と、民族色にあふれることばが魅力的な作品である。プロコフィエフ作曲によるバレエ(『石の花の物語』Сказ о каменном цветке1954)、また映画、オペラ交響詩としても広く知られている。

[安井侑子]

『神西清・池田健太郎訳『石の花他七篇』(角川文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「石の花」の意味・わかりやすい解説

石の花
いしのはな
Kamennyi tsvetok

ソ連の民話作家 P.バジョーフがウラル地方の民話を採集して発表した『くじゃく石の小箱』 Malakhitovaya shkatulka (1939) 中の一編。若い石工のダニーラは野や山に咲く花の美しさにひかれ,孔雀石に刻んでみるが,人も羨む腕ききの彼にも,花だけは生きた感じに仕上がらない。それを仕上げてからカーチャと結婚しようと決心したダニーラは,カーチャの願いも魔女の誘惑も振切って山をさまよい,ついに壮麗な石の花を作りあげる。この作品は 1943年スターリン賞を受賞,その後映画化され,カンヌ国際映画祭でカラー賞を獲得した。また S.プロコフィエフ作曲のバレエは有名。

石の花
いしのはな

P.バジョーフの同名の小説によるバレエ。序章と3幕から成る。音楽 S.プロコフィエフ,振付 L.ラブロフスキー。 1954年モスクワのボリショイ劇場で,G.ウラノワ,M.プリセツカヤ,V.プレオブラジェンスキーらによって初演。豪華な顔ぶれにもかかわらず失敗作ともいわれ,57年,Y.グリゴロービッチレニングラード・バレエ団で改訂上演し,成功を収めた。

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デジタル大辞泉プラス 「石の花」の解説

石の花

ロシア出身の振付家レオニード・ラヴロフスキーによるバレエ(1954)。全3幕8場。ボリショイ劇場で初演。音楽はセルゲイ・プロコフィエフ。ロシアの小説家パーヴェル・バージョフが収集したウラル地方の民話に基づく。

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世界大百科事典(旧版)内の石の花の言及

【バジョーフ】より

…エカチェリンブルグ近郊の冶金工場の職人の家に生まれ,ウラルの風俗をつぶさに観察しながら育った。〈おとぎ話の語り手〉としての彼の名声を高めたのは,ウラルの伝説や風俗に題材をとった連作短編集《孔雀石(くじやくいし)の手箱》(1939)であり,その中の《石の花》は特に有名で,映画やバレエにもなった。古参の共産党員であるバジョーフの創作を貫くのは社会主義的立場からの労働賛美だが,《孔雀石の手箱》は思想的宣伝の枠をこえて美しく詩的な作品である。…

【プロコフィエフ】より

…ミーラはその後の病気がちなプロコフィエフの生活を支えた。ソ連では,オペラ《セミョーン・コトコ》(1939),《修道院での結婚》《戦争と平和》《真実の人間の物語》,バレエ曲《シンデレラ》(1944),《石の花》(1949),映画音楽《アレクサンドル・ネフスキー》(1938)など大規模な劇作品が多い。そのほかにも,《第5~第7交響曲》《第6~第9ピアノ・ソナタ》などあらゆる分野に多くの作品を残した。…

※「石の花」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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