バジョーフ(読み)ばじょーふ(その他表記)Павел Петрович Бажов/Pavel Petrovich Bazhov

日本大百科全書(ニッポニカ) 「バジョーフ」の意味・わかりやすい解説

バジョーフ
ばじょーふ
Павел Петрович Бажов/Pavel Petrovich Bazhov
(1879―1950)

ソ連小説家。ウラルの鉱山技師の家に生まれ、ペルミ神学校を卒業。教師新聞記者を経て作家活動に入る。自ら収集したウラル地方の民間伝承をもとに『ウラルの昔』(1924)、『孔雀(くじゃく)石の小箱』(1939)などの説話物語集を書いた。大自然の秘めた力を体現するファンタスチックな登場人物、豊かな表現力を備えた方言駆使は、作品に独特の叙情性を与えている。『孔雀石の小箱』のなかの一編『石の花』は、バレエ、映画、オペラなどにも脚色され、ことに有名である。ほかに自伝的小説『緑色の小馬』(1939)、回想記『遠きこと、近きこと』(1949)などがある。

[安井侑子]

『神西清・池田健太郎訳『石の花他七篇』(角川文庫)』

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改訂新版 世界大百科事典 「バジョーフ」の意味・わかりやすい解説

バジョーフ
Pavel Petrovich Bazhov
生没年:1879-1950

ソ連邦の作家。エカチェリンブルグ近郊の冶金工場の職人の家に生まれ,ウラルの風俗をつぶさに観察しながら育った。〈おとぎ話語り手〉としての彼の名声を高めたのは,ウラルの伝説や風俗に題材をとった連作短編集《孔雀石(くじやくいし)の手箱》(1939)であり,その中の《石の花》は特に有名で,映画やバレエにもなった。古参の共産党員であるバジョーフの創作を貫くのは社会主義的立場からの労働賛美だが,《孔雀石の手箱》は思想的宣伝の枠をこえて美しく詩的な作品である。その他の著作としては,ルポルタージュ《ウラル昔話》(1924)や,自伝小説《緑のバッタ》(1939)などがある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バジョーフ」の意味・わかりやすい解説

バジョーフ
Bazhov, Pavel Petrovich

[生]1879.1.27. スイセルツキー
[没]1950.12.3. モスクワ
ソ連の作家。冶金工場の工員の家に生まれ,中学校卒業後,教師となった。 1924年処女作『ウラル物語』 Ural'skie byliを発表。 1939年ウラル地方の伝説約 50編を集めた『くじゃく石の小箱』 Malakhitovaya shkatulka (スターリン賞) を発表して作家として名を高めた。同書中の『石の花』は映画化された。

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世界大百科事典(旧版)内のバジョーフの言及

【児童文学】より

… スターリン体制下でも,ボロンコワL.F.Voronkova,ムサトフA.I.Musatov,ノソフN.N.Nosovらが子どもの生活を描いたが,1966年のフロロフV.Frolov《愛について》に至って少年の現実生活を描いて間断するところがなくなった。空想的な物語は不調のようだが,民話のエネルギーをくんで力強く美しい文学作品に結晶させたP.P.バジョーフの《孔雀石の函》(1939)所収の《石の花》は,プーシキン以来のロシア児童文学の伝統の力を垣間見せる。民話への指向はマブリナT.Mavrinaにもうけつがれている。…

※「バジョーフ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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