改訂新版 世界大百科事典 「石井四郎」の意味・わかりやすい解説
石井四郎 (いしいしろう)
生没年:1892-1959(明治25-昭和34)
軍医。旧日本軍細菌戦の責任者。千葉県山武郡出身。1921年京都帝国大学医学部卒業後,陸軍軍医の道を選び,累進して45年軍医中将となる。その間,京大大学院で細菌学,防疫学を専攻し,軍医学校教官時代に細菌兵器の有効性を提唱。旧満州(中国東北地区)にて関東軍直轄の防疫班を創設し,1940年には関東軍防疫給水部(のち第731部隊)に発展し,みずから部隊長となり,一時期をのぞいて敗戦まで在任した。ここでの細菌兵器研究は,現地中国人,ロシア人,捕虜を連行し,人体実験に使用し,その数は数千人に及んだ。石井はソ連参戦とともに脱出して帰国。極東国際軍事裁判で戦犯として追及されたが,実験資料をアメリカに引き渡すことによって戦犯をまぬがれた。なお防疫関係では〈石井式無菌濾水機〉の開発などがある。
→生物兵器
執筆者:松田 武
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報