硫化ビスマス(読み)りゅうかビスマス(その他表記)bismuth sulfide

改訂新版 世界大百科事典 「硫化ビスマス」の意味・わかりやすい解説

硫化ビスマス (りゅうかビスマス)
bismuth sulfide

ビスマスと硫黄の化合物で,次の3種が知られている。

化学式BiS。一酸化ビスマスBiOを含む水中硫化水素を通ずるか,二酸化炭素中でBiOと乾燥硫化水素を加熱して反応させると得られる。黒色ないし灰色粉末。比重7.29~7.8。融点680~685℃。空気中で加熱すると二酸化硫黄を発生して分解する。塩酸に入れるとビスマスを遊離して分解する。

化学式Bi2S3。天然に輝ソウ鉛鉱として産する。ビスマスと硫黄を溶融するか,塩化ビスマス(Ⅲ)の希塩酸酸性溶液に硫化水素を通じ,沈殿した三硫化二ビスマスを硫化水素気流中で200℃で1.5時間,ついで500℃で1時間加熱すると得られる。あるいは,硝酸ビスマス水溶液にチオ硫酸ナトリウムを加えて煮沸しても生ずる。黒褐色ないし黒色の粉末,または金属光沢を有する斜方晶系針状結晶光電効果を示す。空気中で685℃,窒素気流中では300℃以上で分解する。水素気流中で熱すると徐々に還元されてビスマスを生ずる。高温で水蒸気と反応してビスマスを生ずる。酸化力のある熱濃硫酸,および希硝酸には分解して溶解する。濃塩酸には可溶アルカリには溶けない。

化学式BiS2。ビスマスと硫黄を50 kbar,1250℃で直接反応させると得られるが,詳細はまだわかっていない。
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化学辞典 第2版 「硫化ビスマス」の解説

硫化ビスマス
リュウカビスマス
bismuth sulfide

】硫化ビスマス(Ⅱ):BiS(241.05).一硫化ビスマス(bismuth monosulfide)ともいう.ビスマスと硫黄の混合物を融解するか,二酸化炭素気流中で酸化ビスマス(Ⅲ)と硫化水素とを加熱すると得られる.灰色の粉末.密度7.7 g cm-3.水に難溶.空気中ではかなり安定であるが,加熱すると分解して二酸化硫黄を生じる.二酸化炭素中で加熱すると,不均化してビスマスと硫化ビスマス(Ⅲ)になる.[CAS 12048-34-9]【】硫化ビスマス(Ⅲ)(bismuth(Ⅲ) sulfide).Bi2S3(514.16).三硫化二ビスマス(dibismuth trisulfide)ともいう.天然ではキソウエン鉱(bismuthinite)や輝ビスマス鉱(bismuthite)として産出する.乾燥硫化水素中で塩化ビスマス(Ⅲ)を加熱するか,塩化ビスマス(Ⅲ)の塩酸溶液に硫化水素を通じると得られる.黒褐色ないし黒色の金属光沢のある斜方晶系結晶.密度6.78 g cm-3.685 ℃ で分解する.水に不溶,熱濃塩酸,硝酸に可溶.熱硫酸には二酸化硫黄を出しながらゆっくり分解する.酸化性の酸では分解して溶解するが,アルカリには溶けない.光電効果があり,半導体である.ビスマス化合物の合成原料として用いられる.[CAS 1345-07-9]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「硫化ビスマス」の意味・わかりやすい解説

硫化ビスマス
りゅうかびすます
bismuth sulfide

ビスマスと硫黄(いおう)の化合物。3価の化合物が普通に知られる。ほかに一硫化物BiS(計算量の硫黄とビスマスの混合物を融解して得られる灰色粉末。式量241.1。融点685℃。比重7.7)のほか、BiS2(過剰の硫黄とビスマスの混合物を加熱反応させて得られる灰色粉末)もある。

 硫化ビスマス(Ⅲ) 化学式Bi2S3、式量514.1。天然にビスムチナイト(輝蒼鉛(きそうえん)鉱)として産出する。ビスマスと硫黄を溶融するか、ビスマス塩の酸性溶液に硫化水素を通して得られる。黒褐色、斜方晶系の結晶で硫化アンチモン(Ⅲ)と同形である。融点850℃。比重7.39。加熱すると685℃で分解する。水にはほとんど不溶。沈殿物は硝酸、熱濃塩酸に溶けるが、ポリ硫化アンモニウム(黄色)溶液には溶けない。硫化カリウムの濃溶液には溶けてチオ亜ビスマス酸塩KBiS2を生じる。

[守永健一・中原勝儼]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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