日本大百科全書(ニッポニカ) 「酸化ビスマス」の意味・わかりやすい解説
酸化ビスマス
さんかびすます
bismuth oxide
ビスマスの酸化物。種々の酸化物が存在するが、普通は酸化ビスマス(Ⅲ)をさす。
(1)酸化ビスマス(Ⅲ) 金属または水酸化物Bi(OH)3を空気中で強熱する。黄色、多形である。天然には蒼鉛華(そうえんか)として産する。常温で安定な単斜結晶は729℃で立方結晶に転移する。溶かしてから冷やすと650℃で正方結晶となる。低温相がα(アルファ)型で、高温相がβ(ベータ)型である。水に不溶、塩基性酸化物で酸に溶けるが、アルカリには不溶。
(2)酸化ビスマス(Ⅴ) 酸化ビスマス(Ⅲ)をアルカリ性で塩素またはペルオキソ二硫酸塩のような強酸化剤で酸化するとき、褐色または黒色の沈殿として得られる。酸素を失いやすく組成がはっきりしないが、5価ビスマスを含むと考えられ、酸性で酸化剤として用いられる。150℃でBi2O4、357℃でBi2O3となる。
[守永健一・中原勝儼]