社会資源(読み)しゃかいしげん(その他表記)social resources

日本大百科全書(ニッポニカ) 「社会資源」の意味・わかりやすい解説

社会資源
しゃかいしげん
social resources

社会は、その規模大小を問わず、一定の課題を解決したり、特定の目標を達成したりしなければならないが、そのために動員される道具的・手段的価値物を社会資源とよぶ。社会資源は、(1)物質的、エネルギー的な自然資源とその加工物である物的資源、(2)いわゆる知識や観念など具体的にはさまざまな形態の社会情報である情報的資源、(3)物的資源と情報的資源の特殊な組合せとしての人的資源、(4)以上の三つの資源に対する制御を含む社会関係として成立している、たとえば地位権力権限威信信用などのような関係的資源に大別される。それぞれの資源は、基本的には、その生産、流通変換、消費の諸過程をもち、一時点をとれば所与の社会には一定量の資源蓄積とその配分構造がみられるわけである。

 社会システム論を下敷きにして考えれば、以上4種類の資源は、当該社会システムの機能的分化下位システムのそれぞれで特定化されて生産されており、その対応関係は、たとえばパーソンズ型の社会システム(AGIL図式)では、適応Adaptation次元=物的資源、目標達成Goal-attainment次元=関係的資源、統合Integration次元=人的資源、および潜在性Latency次元=情報的資源、のように整理することも可能である。おのおのの資源は機能的分化下位体系間相互でそれぞれインプット、アウトプットとして交換され、社会システムと全体の諸要件充足に資するわけであるが、こうした資源の具体的な配分方式やその制御にはきわめて多様なバリエーションがあり、それが時代や社会によって拘束された具体的・歴史的社会のあり方を彩っているわけである。また社会資源の絶対量や配分構造が当該システムの要件充足の最適化状態との関連で評価的に考察されるときには、これを通してシステムの状態が記述され、それに基づいた計画(的変動)が設計される重要な目安指標)となるのである。

[中野秀一郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

ベートーベンの「第九」

「歓喜の歌」の合唱で知られ、聴力をほぼ失ったベートーベンが晩年に完成させた最後の交響曲。第4楽章にある合唱は人生の苦悩と喜び、全人類の兄弟愛をたたえたシラーの詩が基で欧州連合(EU)の歌にも指定され...

ベートーベンの「第九」の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android