福良津(読み)ふくらのつ

百科事典マイペディア 「福良津」の意味・わかりやすい解説

福良津【ふくらのつ】

能登半島西岸,石川県志賀町にあった湊。古代には渤海(ぼっかい)国使の帰国船の造船,修理,係留,出航の基地として機能した。772年渤海への帰国の途についた渤海国使一行などが遭難して能登国に漂着したため,〈福良津〉で休養したという。883年には渤海使帰還の造船料にあてるため,羽咋(はくい)郡〈福良泊〉の大木伐採が禁じられている。その後も日本海航路において重要な役割を果たした。1672年に河村瑞賢が整備した西廻航路の北陸道唯一の指定港で,江戸時代中期以降は北前(きたまえ)船の風待港として多くの船宿があった。福良灯台は,1608年福良村の住人日野長兵衛が湊入口の岩山篝火をたいたのに由来するといい,1872年に洋式灯台に造り替えられた。

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改訂新版 世界大百科事典 「福良津」の意味・わかりやすい解説

福良津 (ふくらのつ)

古代の港。能登半島の西岸,石川県羽咋郡志賀町の旧富来町福浦に比定される。《続日本紀》に772年(宝亀3)に,渤海からの使節を送る途中の船が暴風にあい,福良津に漂着したことを記す。《三代実録》に883年(元慶7)の勅として,北陸道の海岸に着いた渤海客は,帰還の船を福良泊の近くの山の材でつくるので,みだりに大木を伐採してはならない旨を定めたことを載せている。
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