中国、中央部を東西に走る山脈。西は甘粛(かんしゅく/カンスー)省南東部より陝西(せんせい/シャンシー)省南部を経て、東は河南(かなん/ホーナン)省西部に至り、伏牛山(ふくぎゅうさん/フーニウシャン)、桐柏山(とうはくさん/トンパイシャン)、大別山(だいべつさん/ターピエシャン)などの低平な丘陵となる。もっとも高いのは陝西の渭河(いが/ウェイホー)平野の南部で、一般に標高2000~3000メートルを保ち、最高峰の太白山(たいはくさん/タイパイシャン)は3767メートルである。山脈は中生代の燕山(えんざん)造山運動で隆起し、のちヒマラヤ造山運動でふたたび隆起したもの。傾動性の断層運動により、北側は急崖(きゅうがい)をなすが、南側は緩斜面となっている。したがって北側は激しい侵食を受け、渓谷が美しい風景を呈するものの、交通がきわめて困難であるのに対し、南側には山間盆地が点在して山地農業の中心となっている。気候的にも秦嶺山脈は中国の南北を区分する非常に重要な役割を果たしている。北の渭河平野は半乾燥地帯に属し、年降水量も500~600ミリメートルであるのに対し、南の漢中(かんちゅう/ハンチョン)盆地は1000ミリメートルを超える。気温でも年最低気温では10℃以上の差がある。そのため南北で植生も大きく異なり、農業の条件も違う。秦嶺山脈を東に延長し淮河(わいが/ホワイホー)と結んだ秦嶺―淮河線は、乾燥農業(小麦)と湿潤農業(水稲)を区分する線となっている。
[秋山元秀]
「チンリン(秦嶺)山脈」のページをご覧ください。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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