種子貯蔵(読み)しゅしちょぞう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「種子貯蔵」の意味・わかりやすい解説

種子貯蔵
しゅしちょぞう

遺伝子を親から子、子から孫へと代々伝えていくものが種子で、それには寿命がある。種子貯蔵は、この種子がもつ遺伝的特性をいつでも利用することができるように、安全かつ確実に保存してゆくために行う業務である。植物遺伝資源保存業務のなかではもっとも重要な役割をもつ。種子貯蔵には、貯蔵庫など保存環境の整備と運転、種子の探索、収集、評価、記載、増殖、貯蔵、更新、配布など一連の作業が含まれる。これらの管理業務を効率的に行うには一貫した処理システムをとって行うよう組織化が望まれる。日本における種子のもっとも大規模な貯蔵は農業・食品産業技術総合研究機構農研機構)遺伝資源センターにあるが、ここでは、遺伝資源情報をデータベース管理システムにのせて、情報の検索、交流を円滑に行い、貯蔵種子の効率性の高い利用を図っている。

 種子には、今日の技術では、長期貯蔵の可能な一般種子と、短命で不可能なものとがある。イネダイコンなど乾燥休眠状態で次の生育適期を待つ種子は長期貯蔵が可能であるが、乾燥すると発芽力を失うクリ、またマンゴーマンゴスチンなど熱帯果樹の多くは短命種子が多い。貯蔵種子の寿命には保存環境の温度と関係湿度とが大きく関係する。多くは低温(零下10~零下20℃)で関係湿度25~30%が適している。貯蔵種子は限界寿命が近づくと突然変異をおこしやすい。植物遺伝資源保存の世界的組織である国際植物遺伝資源研究所IPGRI)では、種子貯蔵を、長期貯蔵(零下10~零下20℃、数十年から100年以上、遺伝資源の永久的保存)、中期貯蔵(0~5℃、20年保存と常時活用)、短期貯蔵(室温または5℃程度、2~3年保存と当座的使用)に区分し、長期貯蔵のベースセンターを指定し、全世界が協力して植物遺伝資源を人類の子孫に残すよう活動している。

 層積貯蔵というのがあるが、これは、乾燥すると発芽力を失うモモのような種子を、来春播種(はしゅ)期まで、湿った砂などに層状に蓄えておく方法をいう。

[飯塚宗夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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