翻訳|mangosteen
オトギリソウ科(APG分類:フクギ科)の常緑小高木。マレー諸島原産といわれる。高さ10メートル。葉は対生し、革質で長さ15~25センチメートル、幅6~10センチメートル、先はとがり、全縁。花は雑性花で、雄花は枝の先端に2~9個が群がってつき、両性花は若枝の先端につく。雌花は葉腋(ようえき)に1~2個ずつつき、淡肉色で径約5センチメートル、花弁、萼(がく)ともに4枚。雄しべは発育不全で、雌しべの柱頭は放射状に数個に区分される。果実は球形から圧球形で、横径4~7センチメートル、縦径3.5~6センチメートル、果皮は厚く、熟すにつれ紫黒色になり、果頂に梅鉢様の花痕(かこん)が残る。果肉は白色で、ミカンの瓤嚢(じょうのう)(袋)のように4~8個に分かれて放射状に配列する。中に扇形の種子があり、種皮から黄色の繊維が出て果肉内に入り込む。果肉と種子との分離は困難である。果肉はわずかな酸味と上品な甘味に富み、口内で溶け去るような食味をもち、熱帯産果物の女王といわれる。花期は3~4月であるが、5~6月の地方もあり、5か月で熟す。生食のほか、ゼリーに用いる。果皮部分にはマンゴスチンC24H26O6という黄色色素とタンニンを含み、染料となる。また果皮は収斂(しゅうれん)剤としても用いられる。材は暗褐色で堅く、家具や米を搗(つ)く棒などにする。繁殖は実生(みしょう)または接木(つぎき)による。熱帯特有の湿潤気候の地域でよく育つ。
[飯塚宗夫 2020年7月21日]
熱帯果実の女王とされ,最高の風味を備えるオトギリソウ科の常緑果樹。20mにも達する高木で,葉は長楕円形で対生し,濃緑色。幹や葉を傷つけると黄白色の乳液を出す。果実の外観はカキに似ていて,径5~7cmほど。厚さ約0.5cmの果皮があり,ミカンの袋状に4~8個の白色の果肉が並ぶ。雌雄異株であるが,雄株はほとんどなく,単為結果性であるので,種子は母木と同じ遺伝形質をもつ。マレー半島付近が原産地とされ,熱帯地域の限定された範囲でのみ栽培されているが,結実には季節性があり,一定の時期にしか市場に出荷されない。品種,系統も未分化である。種子の発芽力も数日間と短く,果実から採取した種子は直ちにまかねばならない。成熟果の生食のほか,可食部分を砂糖煮した加工品がある。果皮部分はタンニンと黄色色素マンゴスチンmangostinを含んでいる。前者は皮なめし用に,黄色色素は更紗(さらさ)の染料として重用される。乾燥樹皮も黒色染料となる。
フクギ属Garciniaは熱帯域に200種ほどが分布し,その過半数の果実は食用になるが,多くは酸味が強く,重要な果樹はマンゴスチンのみである。
執筆者:岸本 修
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