立後れる(読み)タチオクレル

デジタル大辞泉 「立後れる」の意味・読み・例文・類語

たち‐おく・れる【立(ち)後れる/立(ち)遅れる】

[動ラ下一][文]たちおく・る[ラ下二]
人より遅く立ち上がる。「相手力士に―・れる」
人よりおくれて物事着手する。先を越される。また、遅くなって時機を失う。「選挙運動に―・れる」
物事の進歩などが標準より劣る。「社会保障制度が―・れている」
死に遅れる。先に死なれる。
むつましかるべき人にも―・れはべりにければ」〈若紫
[類語]遅れる後れをとる

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「立後れる」の意味・読み・例文・類語

たち‐おく・れる【立後・立遅】

  1. 〘 自動詞 ラ行下一段活用 〙
    [ 文語形 ]たちおく・る 〘 自動詞 ラ行下二段活用 〙
  2. [ 一 ] ( 「たち」は接頭語 )
    1. 他の人よりおくれる。また、時期などがおそくなる。
      1. [初出の実例]「暗く帰り給ふに、人にたちをくれて」(出典:宇津保物語(970‐999頃)俊蔭)
    2. 才や程度が他より劣る。ひけをとる。
      1. [初出の実例]「学問をも遊びをも、もろともにして、をさをさたちをくれず」(出典:源氏物語(1001‐14頃)帚木)
    3. 死におくれる。生きながらえる。人に先立たれる。
      1. [初出の実例]「睦まじかるべき人にもたちをくれ侍りにければ」(出典:源氏物語(1001‐14頃)若紫)
    4. 物事の着手・進歩発展などが標準とすべきものよりもおくれている。
      1. [初出の実例]「機械文明の点で立ちおくれた日本人に於いてすら」(出典:人間が機械になることは避けられないものであろうか?(1948)〈渡辺一夫〉)
  3. [ 二 ]
    1. 立つのが人よりもおくれる。立ち上がるのがおそくなる。
    2. ( 「たち」は出発するの意 ) 出発がおくれる。
      1. [初出の実例]「国にたちをくれたる人々待つとてそこに日を暮しつ」(出典:更級日記(1059頃))
    3. ( 「たち」は新しい季節などが来るの意の「たつ」から ) その季節の来るのがおくれる。その季候となるのがおそくなる。
      1. [初出の実例]「わきて今日逢坂山の霞めるはたちおくれたる春や越ゆらん」(出典:山家集(12C後)上)
    4. ( 「たち」はのぼり立つの意の「たつ」から ) 霧や霞、また煙などがおくれてのぼり立つ。
      1. [初出の実例]「かすみだにたちをくれたるむばたまをいつのまにかは雪ふりぬらむ」(出典:大斎院前御集(11C前))

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