立花大全(読み)りっかたいぜん

改訂新版 世界大百科事典 「立花大全」の意味・わかりやすい解説

立花大全 (りっかたいぜん)

いけばなのなかの立花の啓蒙的な伝書。《古今立花大全》ともいう。1683年(天和3)刊。5冊(5巻)。著者は記されていないが,《増補正風体立花大全》(1696)によれば,2代池坊専好弟子の十一屋太右衛門である。専好によって大成された模範的な立花様式の普及をめざして,はじめて立花と〈砂の物〉の技法を,系統的に理論づけたものである。また立花を〈たてはな〉といわず,〈りっか〉と称したのも,本書がはじめてである。巻一は真(しん)とおもな道具(役枝)の使いかた,巻二は真と草留(くさどめ)に使う花材のこと,巻三は砂の物,巻四は花材や立花用語の解説,巻五は草木の削り方や水のさし方などの下準備のことなど,立花を習う初心者にも適切な注意と心づかいが示されてある。立花様式がやや沈滞しはじめたこの時期に正統派の立花理論を集大成した本書は,多くの愛好者にむかえられ,元禄・享保以降にもたびたび版を重ねている。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「立花大全」の意味・わかりやすい解説

立花大全
りっかだいぜん

いけ花伝書。作者は池坊(いけのぼう)2代目専好(せんこう)の弟子十一屋太右衛門(じゅういちやたうえもん)。1683年(天和3)刊。専好によって大成された立花様式を模範として、これを体系的に理論づけた大全の名称にふさわしい立花の集大成の書といえる。立花を「たてはな」から「りっか」と呼称するのも本書が初見である。立花の構成を真、行、草の花型に分類し、真の花を役枝心(やくえだしん)の直立した儀式的な格式のある花とし、行の花を除心(のきしん)、狂いじんの立花、草を「砂の物」と定めた。さらに従来の七つの役枝に面道具(めんどうぐ)の機能を与え、心、正心から大葉(おおば)、後囲(うしろがこい)、繕之具(つくろいのぐ)に至る9から12の名称を固定、その寸法まで規定して、花型の完成を徹底させている。巻1・真の花型、巻2・役枝の素材による機能、巻3・砂の物や許し物の類(たぐい)、巻4・草木の居処、嫌うべき類、巻5・草木のため方、削り方など、従来の秘伝口伝(くでん)に属する技法を惜しみなく公開している。

[北條明直]

『西山松之助校注「立花大全」(『日本思想大系 61 近世芸道論』所収・1972・岩波書店)』

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世界大百科事典(旧版)内の立花大全の言及

【いけばな】より

…こうした立花の盛行期には多くの立花師たちが輩出し,大住院以信,高田安立坊周玉,桑原富春軒仙渓など専好の門人たちが活躍した。出版活動としての立花の教導書の刊行や立花図の作品集的刊行も多く,十一屋太右衛門による《立花(りつか)大全》や,富春軒による《立華時勢粧(りつかいまようすがた)》をはじめ,立花愛好者たちの需要にこたえた刊本が数多く出版されている。立花は巨大化し元禄期の立花師,藤掛似水,猪飼三枝による南都大仏殿の開眼供養における献花は,松一色による対瓶の大立花で,高さ12mに及ぶものであったと記録される。…

【立花】より

…当時の立花は,それを描写した花形絵の現存によって知られる。花形絵は,《古今立花集》(1671)がその初刊であり,以後,《立花大全(古今立花大全)》など,立花の秘伝を公にした花伝書が続いて刊行された。時代によって,立花の形姿をこしらえる技法上の法則は同一ではないが,天然の気を一つの花瓶に写す象徴的表現は,表現技巧の極致であるといえよう。…

※「立花大全」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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