いけ花流派池坊の第32世で立花(りっか)の名手。近衛家煕(このえいえひろ)の言行を集録した『槐記(かいき)』には、「立花ノ中興ハ専光(好)ニ止マリタリ、専光ヲ名手トス」と称されている。2代専好には200点に余る立花図が曼殊院(まんしゅいん)、池坊家元、陽明(ようめい)文庫などに残され、立てた場所、年月日の明らかなものだけでも百数十点に及んでいる。これは、2代専好が後水尾(ごみずのお)天皇(上皇)の特別な愛顧を被り、宮中立花の指導者であったからで、天皇や門跡(もんぜき)や公家(くげ)たちが、稽古(けいこ)の範として絵師に命じてその立花図を写しとったものと考えられる。2代専好の活躍した最盛期は寛永(かんえい)期(1624~44)を頂点とし、寛永6年(1629)閏(うるう)2月5日と寛永6年七夕(たなばた)に催された「紫宸殿御立華(ししんでんごりっか)」会はとくに名高く、後水尾天皇以下諸公卿(くぎょう)の出瓶(しゅっぺい)があり、前者の会は『槐記』のなかで、「秀吉ノ大茶湯後ノ一大壮観ナリ。専光(好)カ桜一色ト云(い)フコトハ此時ヨリ始マリケル」と記述するほどであった。このように2代専好は立花を完成させた名人であるばかりでなく、公武にいけ花を介して交誼(こうぎ)を結び、池坊の地歩を不動のものとした。彼は立花を単なる座敷飾りとせず、一瓶一瓶が独立した鑑賞に堪えるものとして構成したところに、その最大の特色がある。
[北條明直]
『華道家元池坊編『池坊専好立花名作集』『池坊専好立花名作集 解説』(1976・日本華道社)』
(岡田幸三)
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京都頂法寺の僧坊,池坊に住む僧侶専好の通称。この池坊に専好の名を名のるものは3人をかぞえ,いずれも花道宗匠として活躍した。初世専好(?-1621)は,たびたび宮中に祗候して〈立花〉を立てているが,みずから花師と称し池坊専応以来の伝統を継ぎながら,作風はおおらかで,華麗な表現をみせ,入木道(書道)の理論をふまえた新しい技法論《専好華伝書》を著している。2世専好(?-1659)は,先師専好の花道を継ぎ,理論面よりも実作上で名人と称賛された。とくに天皇や門跡,公家が参加して京都御所の紫宸殿や仙洞御所で催された花興行(花会)では指導的役割をはたし,後水尾上皇の内意によって僧位(法橋(ほつきよう))を与えられた。作風は師の遺風を守りながら,繊細美麗な花形をつくり出し,それが後代における花形の手本となっている。3世専好(?-1734)は,頂法寺の法灯を守りながら,池坊家の花道の芸風と精神を墨守して,それを次代へ伝えている。
→池坊
執筆者:岡田 幸三
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立花(たてはな)師。安土桃山~江戸中期に3世を数える。初世(1536~1621)は立花の構成理論に儒教を導入し,立花に画期的な変化をもたらした。1599年(慶長4)京都大雲院で催した百瓶華会(ひゃくへいかかい)は絶賛をえた。2世(1570~1658)は後水尾(ごみずのお)天皇に召されて立花を指導し,宮中立花会の判者にもなり,法橋(ほっきょう)に叙された。立花の大成者で,立花の構成理論に仏教をもとりこんだ。作品図は池坊・曼殊院・陽明文庫などに残されており,重文。3世(1680~1734)は伝書の整備と伝授の式法を改訂。また抛入(なげいれ)花にも対応した。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
…桃山時代になると,ほかの流派はほとんどみられず,立花を家業とする池坊の位置は定着した。東福寺の月渓聖澄が池坊専好の花展のために書いた《百瓶華序(ひやくへいかのじよ)》(1600)には,池坊を〈累代,華を瓶裡に立てるを以て家業と為す〉とあり,また〈其の元祖,専慶という。専慶より今の池坊法印に至る,累十三葉〉と述べて〈累(かさね)ること十三葉〉と専慶から専好(初世)までの系譜をかぞえ,専好の技量を大いに賞賛している。…
…桃山時代になると,ほかの流派はほとんどみられず,立花を家業とする池坊の位置は定着した。東福寺の月渓聖澄が池坊専好の花展のために書いた《百瓶華序(ひやくへいかのじよ)》(1600)には,池坊を〈累代,華を瓶裡に立てるを以て家業と為す〉とあり,また〈其の元祖,専慶という。専慶より今の池坊法印に至る,累十三葉〉と述べて〈累(かさね)ること十三葉〉と専慶から専好(初世)までの系譜をかぞえ,専好の技量を大いに賞賛している。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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