竜宮伝説(読み)りゅうぐうでんせつ

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

竜宮伝説
りゅうぐうでんせつ

竜宮にまつわる伝説、説話の総称。竜宮とは竜神、あるいは海神、乙姫(おとひめ)などが住むという想像上の宮殿で、その場所は多くは岩穴の奥とか川や淵(ふち)の底、海底、海のかなたにあるといわれる。『古事記』によると「魚鱗(いろこ)のごと造れる宮室(みや)、それ綿津見(わたつみ)の神の宮」とあり、後世の竜宮城を思わせる。ところが『平家物語』では、死者の赴く世界(巻11「先帝御入水(じゅすい)の事」)のように意識されている。呼称は古くは常世(とこよ)であったが、一般には竜宮といわれる。南西諸島ではネリヤ、ニラヤ、沖縄ではニライカナイとよばれる。このように竜宮信仰は多様性をもっているが、それは同時にさまざまな説話の形となって伝えられてきている。まず「竜宮淵」とよばれる伝説がある。その淵は竜宮に通じているといい、乙姫の機織(はたお)りの音が聞こえるという。この淵に膳(ぜん)や椀(わん)を借りるのを願い出ると、翌日にはきちんと用意されていた。ところが、ある男が破損したまま返したために、それ以後は貸さなくなったという。いわゆる「椀貸し伝説」とよばれるもので、これと類似した話は、日本以外にも中国やヨーロッパにも存在する。竜宮は豊かな国で、その意にかなえば幸福を授けてくれるという信仰が、その基盤に流れている。それが顕著に表れているのが、竜宮と人間との交渉を物語る昔話である。助けた亀(かめ)に連れられて竜宮を訪ねる「浦島太郎」の昔話は有名であるが、ほかにも「竜宮女房」「竜宮童子」などがある。「竜宮女房」は、竜宮に行った男が娘をもらって帰り自分の妻にする。それを知った殿様は、その妻を自分のものにするために男に難題を出すが、逆に命を奪われる。「竜宮童子」は、水中に献じた花や薪(まき)の礼に竜宮に招かれ、小僧あるいは小槌(こづち)、小犬をもらい福を得るという内容である。ただ、あまりに欲を出しすぎてすべてを失うという結末になる。これらの昔話に共通していえることは、竜神の意にかなった者が富を得て幸福な生活を送るということである。[野村純一]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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