符号分割多元接続(読み)ふごうぶんかつたげんせつぞく(その他表記)code division multiple access

日本大百科全書(ニッポニカ) 「符号分割多元接続」の意味・わかりやすい解説

符号分割多元接続
ふごうぶんかつたげんせつぞく
code division multiple access

無線通信において、信号を伝送するために最低限必要な周波数帯幅よりも、はるかに広い周波数帯幅に、拡散信号(符号)を使用して拡散させて送信し、同じ拡散信号によって受信復調した相手方だけが、拡散前の信号に復原できるようにした多元接続の方式。略してCDMAという。周波数帯幅の拡散は送信すべき信号自身で先に搬送周波数を周波数変調した後、拡散符号pseudo noise(PN=疑似雑音。信号より数百倍から数千倍の高速度のパルス群の繰返しをもたないパルス列の連続)によって2相位相変調することで達成される。周波数帯幅が拡散符号のオーダーまで広がった信号は単位周波数当りの電力密度が数百分の1から数千分の1に低下し、受信点では熱雑音や他の信号のなかに埋没してしまう。このレベルの電波は通常の受信機では受信できないが、この方式では受信側において送信側と同じ拡散符号を用いて復調するため拡散していた周波数帯は狭まり最初の被変調波に復原される。電波の伝搬中に受ける混信や雑音は拡散符号と相関がないために復調の際に除去され、拡散によって占有周波数帯幅が広がっても、雑音レベル以下であるために、他の通信に妨害を与えることはない。無線局間の同期は任意で、回線の規模は最大であり、フェージング(電波の受信状態が時間とともに急速に変化する現象)にも強い耐性を有している。

 無限に近い通信路が得られるので電波の帯域使用効率はきわめて良好であり、アクセスも容易である。しかも、この方式は拡散信号を知らなければ存在すら知ることができないため、傍受することがまったく不可能なのである。2000年(平成12)ごろから衛星通信をはじめとして、第3世代の携帯電話といわれるデジタル化携帯電話などに広く使用されている。このCDMA方式を導入したことにより、世界的に通信の大量消費時代がもたらされたことは確実である。おもしろい例としては、カーナビゲーションとして親しまれている全地球測位システムGPS)にもCDMAが使用されているということである。GPSの航法信号はPN信号により拡散変調された位相偏移変調PSKphase shift keying)波であり、GPSで、衛星から送信される弱い電波を走行中の自動車で容易に受信できるのは、PNにより周波数拡散されている電波を同じPNで解読するからなのである。また、このシステムがスペクトラムを拡散させる切り口からみてスペクトル拡散通信方式(SS通信方式=spread spectrum communication system)とよぶこともある。このような通信方式は秘話性がきわめて高いので、警察通信とか軍事用通信に小規模に利用することもできる利用価値の高い通信方式でもある。

石島 巖]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

IT用語がわかる辞典 「符号分割多元接続」の解説

ふごうぶんかつたげんせつぞく【符号分割多元接続】

CDMA

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