日本大百科全書(ニッポニカ) 「多元接続」の意味・わかりやすい解説
多元接続
たげんせつぞく
multiple access
無線通信において、中継局の中継機能を分割使用して、多数の利用局が同時に希望する相手局と通信できるようにする接続の方式。1970年代以降の衛星通信を第1世代とよび、主として周波数分割多元接続(FDMA)によってインテルサットやマリサットなどの多元化された商用衛星通信が実用化した。1984年(昭和59)以降の衛星通信を第2世代とよび、伝送情報をバースト(一定間隔の信号の列)化し、時分割多元接続(TDMA)を用いて回線数を拡大し通信需要の増加に対応した。さらに1999年(平成11)以降を第3世代とよび衛星通信の世界的な需要増大に対処するため、符号分割多元接続(CDMA)、空間分割多元接続(SDMA)などの新方式が使用された。この接続方式は携帯電話の急激な普及に対応する手段としても用いられるところとなった。携帯電話は2010年(平成22)ごろから多機能化がさらに進み、第3.5世代とか第3.9世代などとよばれるほどの発展を示し、周波数分割多元および時分割多元の両者の接続システムの特徴を組み合わせて多様性のある需要に対応している。通信衛星の機能や、携帯電話通信網のセルcell(細胞、中継局)の機能は、通信工学的には、中継用のトランスポンダーtransponder(送受信機transmitter-responderの略)の役をなすもので、従来の無線中継器と同じ、受信した電波の周波数やバーストを特定のチャネルに変換して再送信する装置にすぎない。しかし、それが通信衛星という理想的な位置に搭載されたり、携帯電話網を構成するセルに適切に配置されることによって劇的な変貌(へんぼう)を遂げ、利用者の要求を満たす多元接続のネットワークを形成することになるのである。
[石島 巖]