山梨県中央部、中央本線笹子―甲斐大和(かいやまと)間の長さ4656メートルの単線鉄道トンネル。1896年(明治29)着工、1903年開通。笹子峠下を貫き、中央本線建設時の最大難所であった。明治初期に掘進された逢坂(おうさか)山トンネル、柳ヶ瀬(やながせ)トンネルの施工技術が生かされたが、地質堅硬のため削岩に苦労した。自家発電設備を設け、カンテラ照明にかえて電灯照明が行われ、ダンプカー、電気機関車が使用された。明治年代に建設された代表的鉄道トンネルである。現在下り線に使用している。
[藤井 浩]
中央本線笹子―甲斐大和間の長さ4670メートルの単線鉄道トンネル。1963年(昭和38)着工、1965年開通。中央本線複線工事にあたり、笹子トンネルの北側に25メートル離れて新設された。トンネルの地質は砂岩、粘板岩で、全断面掘削工法により施工した。明治年代に建設された笹子トンネルは、5年11か月の工期を要したが、新笹子トンネルは1年3か月で貫通した。現在上り線に使用している。
[藤井 浩]
国道20号と中央自動車道にも同名のトンネルがあり、国道20号の新笹子トンネルは2953メートルで1958年開通(なお旧甲州街道にある笹子トンネルは約250メートル、1938年開通)。中央自動車道の笹子トンネルは上り4784メートル、下り4717メートルで、ともに1977年に開通した。
[藤井 浩]
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…また,山梨県は峠を境に東の郡内地方,西の国中地方(甲府盆地)に分かれている。1903年に中央本線の笹子トンネルが開通し,昭和初めには笹子峠の南約6kmにある御坂峠を経由する道路が整備され,笹子峠は交通の要路からはずれた。1958年笹子有料トンネル(1971無料開放)が開通し,77年には中央自動車道の笹子トンネルが開通したため,峠越えの道路は現在ではほとんど使われない。…
…以来,国内の鉄道建設の伸長につれて,地形の険しい日本では多数のトンネルが必要となり,また火山性などの複雑かつ困難な地質条件を克服する必要から,トンネル技術の進歩が大いに促進され,日本を有数のトンネル技術国たらしめることとなった。明治,大正,昭和の前半にかけては,笹子トンネル(1896‐1902年,延長4.6km),清水トンネル(1922‐31年,延長9.7km),丹那トンネル(1918‐34,延長7.8km),関門トンネルなどが代表的なものとされる。第2次世界大戦後は,在来鉄道の複線化やこう配改良,新線建設などにより,北陸トンネル(1957‐61年,延長13.9km)や新清水トンネル(1963‐67年,延長13.5km)などが生まれ,また新幹線の建設は一挙に多くの長大トンネルを生み出すこととなり,1981年には世界最長の大(だい)清水トンネル(延長22.2km)が完成している。…
※「笹子トンネル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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