手首の手のひら側にある骨と
手の過度の使用、妊娠によるむくみ、骨折や
前記のようにさまざまな原因があるので、ひとつに限定することが困難な場合があります。
初めは人差し指、中指を中心に親指と薬指の親指側に、しびれと痛みが起こります。これらの症状は朝、目を覚ました時に強く、ひどい時は夜間睡眠中に痛みやしびれで目が覚めます。この時に手を振ったり、指の運動をすると楽になります。
進行すると親指の付け根の
手首の手のひら側をたたくと、痛みが指先にひびくティネル徴候がみられます。手首を手のひら側に最大に曲げるとしびれや痛みが増強する、手関節屈曲テストが陽性になります。
電気を用いた検査では、神経を電気で刺激してから筋肉が反応するまでの時間が長くなります。知覚テスターという機器で感覚を調べると、感覚が鈍くなっています。
首の病気による神経の圧迫や、糖尿病神経障害、手指の他の
しびれや痛みが軽症~中等症の場合は、手首を安静に保つための装具を使用したり、ステロイド薬のトンネル内注射を行います。内服薬では消炎鎮痛薬やビタミンB剤を使用します。これらの保存療法が効かない場合や、筋肉にやせ細りがある場合は手術を行います。
手術の方法は、靭帯を切ってトンネルを開き、神経の圧迫を取り除きます。トンネルの上を4~5㎝切って行う場合と、トンネルの入り口と出口付近でそれぞれ1~2㎝切って内視鏡を入れて行う場合とがあります。
指にしびれや痛みがあり、朝起きた時にひどかったり夜間睡眠中に目が覚めるようなら、整形外科を受診してください。
親指の付け根の筋肉がやせていれば、手術を含めた早急な治療が必要です。この状態が長く続くと、トンネルを開放する手術だけでは回復できず、腱移行術という健康な筋肉の腱を移動する手術が必要になります。
鈴木 克侍
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
手根管内でおこる正中神経の機能障害。40~50歳以降の女性が,親(母)指,人差(示)指,中指のしびれや痛みのために夜間目を覚ますことがあると訴えた場合,整形外科の専門医はこの疾患を考える。手根管とは,手関節部の掌側にあり,手根骨と靱帯(じんたい)で囲まれた狭い通路のことをいう。その中には5本の指にいく屈筋腱が通っている。一方,手には,その知覚や運動をつかさどる神経として正中神経,尺骨神経,橈骨(とうこつ)神経がある。正中神経が手根管の中を通っていることが,この疾患の発症に密接な関係がある。つまり正中神経が手根管内でなんらかの原因で圧迫を受けて,神経の刺激症状や麻痺の症状を起こしたのがこの疾患の病態である。正中神経の知覚繊維が障害されると,親指,人差指,中指の指先と薬(環)指の親指側半分にぴりぴりした異常感,痛み,しびれ感が現れることになる。また運動繊維が圧迫されると,親指のつけ根のふくらみの部分にある母指球筋の力は弱くなり,やがて萎縮して働きを失ってしまう。親指の細かい運動が障害され,とくにつまみ動作が不自由になる。手根管で正中神経が圧迫される機序については,もともとこの通路は非常に狭く,手関節を背屈したり掌屈したりすることによって内圧が増加することと関係がある。手関節の背掌屈運動をくり返しながら指を曲げたり伸ばしたりの仕事を続けているうちに,正中神経は屈筋腱によって圧迫を受けてついには麻痺の状態になるのである。月経閉鎖期の中年女性や妊婦に多いことなどからホルモンも関係しているらしいが確かな根拠はない。手関節部の骨折,脱臼や,関節症,リウマチ性腱鞘炎があっても,手根管は狭くなり神経圧迫の原因となる。夜間に症状が増強するのは,就寝時には血液が四肢末梢に鬱滞(うつたい)して,神経圧迫が強くなるためである。治療は初期であれば局所の安静が第一である。手根管内にハイドロコルチゾンを注入することもある。しかし麻痺がどんどん進行する場合には,手根管を縦に切り開いて神経への圧迫を取り除いてやる。母指球部の筋肉の萎縮や知覚鈍麻が極端に強くならないうちに手術をすれば予後は良好である。
執筆者:石井 清一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
手根管内部を通る正中神経が締めつけられてすぼまり、狭窄(きょうさく)をおこすことにより生じる絞扼(こうやく)性神経障害。手根管は、手首に近い部分にある八つの骨で構成される手根骨と、手掌の付け根寄りの部分にある横手根靭帯(じんたい)に囲まれた管腔(くう)をさす。英語名称はcarpal tunnel syndromeで、略称CTS。正中神経が支配する手指(母指(ぼし)・人差し指・中指(ちゅうし)・薬指(くすりゆび)の母指側)のしびれと疼痛(とうつう)、および母指の運動障害などを主徴とする。発症初期には夜間や明け方におもに人差し指や中指などの疼痛を訴えることが多いのも特徴で、やがて母指球筋の萎縮(いしゅく)により運動障害を生ずるようになる。手を過度に使用した場合や糖尿病、関節リウマチのほか、人工透析によるアミロイド沈着などが原因と考えられることもあり、また妊娠や出産に伴って発症することもあるが、原因不明の特発性のものも多い。40~60歳代の中年以降に発症することが多く、また女性の発症が顕著に認められる。治療としては、軽症の場合はステロイド薬の注射や装具を用いることで改善する場合もあるが、重症例では正中神経の除圧術を検討する。
[編集部]
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…症状としては,圧痛があり,知覚異常や運動障害が起こる。リウマチ性のものは,手指の腱鞘によくみられ,腫張によって手根管症候群を併発することもある。腱鞘炎は慢性化すると,腱鞘が肥厚して狭窄を起こして腱の動きを障害するようになる。…
※「手根管症候群」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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