改訂新版 世界大百科事典 「算用記」の意味・わかりやすい解説
算用記 (さんようき)
書名ではあるが固有名詞ではなく,数学の教科書,計算が書かれた書,あるいは商家の大福帳を指す。数学史上有名なのは,竜谷大学所蔵の《算用記》で,1620年(元和6)ころ,あるいはそれ以前に刊行された教科書で,現存最古の数学書と見られている。内容は,八算,見一,四十四割,四十三割,唐目十六割,体積,利息,細工作料,検地,普請割,登り坂,測量その他となっている。毛利重能の《割算書》(1622)はこの《算用記》を改訂増補してまとめられた数学書である。前述の算法のほとんどが毛利重能の《割算書》に引き継がれている。錐率100/296はこの《算用記》と《割算書》にのみ見られる値である。天理大学に蔵されている《算用記》(1628)は《塵劫記》と《割算書》の両者から抜き出してまとめられた数学書である。ほかにも〈算用記〉と表題のある数学書はいくつか出版されている。
執筆者:下平 和夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報