改訂新版 世界大百科事典 「納税義務者」の意味・わかりやすい解説
納税義務者 (のうぜいぎむしゃ)
租税法律の規定により租税を納付する義務(納税義務。租税債務ともいう)を負担する者のこと。租税債務者ともいう。課税物件(課税の対象のこと),課税物件の帰属,課税標準,税率等とならんで課税要件の一つとされている。自然人・法人のみならず,権利能力なき社団・財団も納税義務者とされる場合がある(国税通則法3,7条,法人税法3,4条等)。納税義務者は,経済的に租税を負担する担税者とは必ずしも一致しない(たとえば,〈消費税〉・酒税等の間接消費税の場合は,事業者,製造業者等が納税義務者とされているが,担税者は消費者である)。源泉徴収義務者のように他人(納税義務者)の租税を徴収して納付する義務を負う者(徴収納付義務者)は納税義務者ではない。これに対して,連帯納税義務者(国税通則法8,9条等。たとえば,共有物に係る租税について複数の納税義務者が連帯関係にたつ場合)や第二次納税義務者(納税義務者から租税を徴収できないときに納税義務者と特殊な関係のある第三者に納税義務を負わせる場合。国税徴収法32条以下,地方税法11条以下)は納税義務者に含まれるとされる場合がある。直接国税の納税義務者は,源泉が国内にあるか国外にあるかを問わず課税物件のすべてについて納税義務を負う無制限納税義務者と,国内に源泉のある課税物件についてのみ納税義務を負う制限納税義務者とに分けられる。なお,外交官等に関しては納税義務が免除される。
執筆者:中里 実
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報