改訂新版 世界大百科事典 「権利能力なき社団」の意味・わかりやすい解説
権利能力なき社団 (けんりのうりょくなきしゃだん)
Verein ohne Rechtsfähigkeit[ドイツ]
法人格のない社団,人格なき社団,または法人に非ざる社団ともいう。日本の法制は,法人を公益法人と営利法人とに截然と区別し,構成員の福利など非営利を目的とする中間的なものについては,特別法がない限り法人とはなれないことにしている(民法34条,35条,商法52条)。他方,法律上法人となりうる道がありながら法律の要求する手続をとらないため,あるいは法人設立中であるなどの理由で,法人格のない社団の発生は避けられない。前者の例としては,研究団体や親睦団体,商店会や町内会などがあり,後者の例としては,法人となる手続をとらない労働組合や福祉団体,設立中の会社などがある。これらの団体も,組織の根本規則を定め,資産の独立性が保障され,代表者が定められている限り,実体において社団法人と異ならないといえる。そこから,社団の内部関係については,民法の社団法人の規定を準用し,外部関係については,民事訴訟法29条で原告となり被告となることが認められているので,社団自体の名で取引が可能であると解されるに至っている。ただ,不動産登記については,実務上代表者個人の名で登記するほかないとされている。以上のことは,法人とならない財団についても同様にいえる。これを,〈権利能力なき財団〉という。なお,法人税法その他各種の法律でこれらの社団や財団を法人とみなして処理するものが増加してきている。
執筆者:鍛冶 良堅
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報