品物を入れる紙製の容器の総称。化粧箱、段ボール箱など角型の紙箱のほか、紙コップ、紙筒など丸型のものもあり、クラフト紙などの紙袋類も含まれる。紙器は固体の品物を入れて輸送するだけのものであったが、原料用紙の改良および紙器製造技術の改良が進み、粉体、液体の容器として、商品の保護、保管、輸送の合理化が進んだ。さらに商品の販売促進および管理のため塗工、印刷など種々の加工が施されるなどにより、紙器の種類は多様化している。
[御田昭雄 2016年4月18日]
紙器の用途によって原料パルプを選んで抄造した洋紙および板紙を用いるが、以下おもなものをあげる。白板紙は表層に白いパルプを使用した板紙で、塗工したものと非塗工のものがある。食器、雑貨などの箱ばかりでなく、広く各種紙器の原紙として用いられる。とくにアイボリーは晒(さらし)バージンパルプ100%で抄造した板紙で、容器に直接食物が触れるミルクカートンなどの原紙として使用される。カード紙は表層および裏層が晒化学パルプ、芯(しん)に中白系の古紙パルプを用いた板紙で、菓子、雑貨などを入れる箱類や紙筒などの原紙として用いられる。クラフト紙は未晒クラフトパルプから抄造され、強度が大きいのでクラフト袋等の原紙とされる。またクラフトライナーとセミ中芯(なかしん)用紙は引張り強さ、破裂強さなどに優れ、比較的安価であるため、段ボールの表層(ライナー)および中芯(コルゲートメディアム)の原紙として用いられる。
[御田昭雄 2016年4月18日]
(1)バッグインカートン 紙箱の内側に耐湿、耐水性などの性質をもった袋を組み込んだもので、吸湿性の粉末などの容器として用いられる。
(2)紙コップ 単に紙製のもののほか、アルミ箔(はく)、プラスチックなどラミネートしたものもある。形状もタンブラー型、ボトル型、円筒型などがある。
(3)コンポジット缶 単に板紙またはアルミ箔やプラスチックをラミネートした板紙をスパイラル巻きまたは平巻きしたものを切断して胴体とし、金属、プラスチックまたは板紙を用いて蓋(ふた)と底とした缶。小型のものから大型のものまであり、最近強度、耐湿性などの性能の向上に伴い、薬品類、粉チーズ、果汁などの容器として使われる。
(4)ミルクカートン 液体用カートン、牛乳、果汁、清酒などを入れる紙箱で、アルミニウム、ポリエステルなどをラミネートした、耐湿、耐水性で透気性のない紙でつくる。紙器会社であらかじめ切り抜き成形するプレカット型と、ミルクプラントなどで紙器原紙を切り抜き成形しながら内容物を充填(じゅうてん)するポストフォーム型がある。
最近、紙器の性能の向上および容器のワンウェー方式の軽便さが受けて、その需要は急速に伸びた。一方、廃棄した紙器の処分、回収紙器からのパルプ再生技術の研究開発が進めば、さらに紙器の需要は広がるであろう。
[御田昭雄 2016年4月18日]
紙で作った容器の総称で,はっきりした定義はないが,紙袋や段ボール箱は含まない。紙器は物品の保管や輸送にあたって物品が損失したり,傷つかないように収納保護する目的で使用されたが,さらに買手に内容物に対する購買意欲を増させるように,印刷したり外観をくふうしたりする。紙器の種類は大別して折りたたみ箱,貼(は)り箱,システムカートン,特殊カートン,紙皿,紙コップなどがあり,用途に応じてそれぞれ材料が異なる。紙器の原紙は板紙であるが,段ボール用板紙は使用せず,白板紙を使用する。最も多く使用している白ボールは白板紙の2/3を占める。原紙に印刷したものを型に打ち抜き,製函機に通して容器にする。価格が安いので需要が多く物品の外装に使用される。菓子,酒などの食品用が多いが,繊維製品,セッケン,洗剤,医薬品,日用雑貨,化粧品などの包装にも広く使用されている。白板紙の最高級品であるアイボリー紙は,さらしクラフトパルプを100%使用し高度の仕上げをしてあり,折曲げ抵抗も大きい。アイボリー紙には表裏がないように両面とも平滑に仕上げたものがあり,高級化粧品の外装に使用するほか,高級絵はがきにも用いられる。カード紙や一般マニラボールは,薬品,化粧品,タバコなどのように清潔感を必要とする包装に使用している。従来,金属容器,ガラス容器を使用していた分野にも紙器が用いられるようになり,紙器の用途が広がっている。特殊カートンは食品包装に多く使用されており,紙の片面に塗工をして印刷効果を高めるようにし,裏側にはプラスチックフィルムやアルミ箔をはり合わせて液体の浸透を防ぎ,液体容器としても用いられている。具体例としては,紙コップ,紙皿,ミルクカートン(箱詰牛乳),液体カートン,冷凍食品容器などがあり,衛生上の配慮から蛍光染料を使用していないのが特徴である。はり合せで防水性を紙にもたせているので紙の切断面から水が浸透するのを防げない。したがって原紙に対しても強いサイジングを行っている。コンポジット缶は,積層した板紙で紙筒を作り,筒の上下に金属,プラスチックまたは紙製のふたと底をつけた紙缶である。内側にアルミ箔,プラスチックフィルム,プラスチックコート紙などをはり,冷凍濃縮果汁,スナック菓子,粉チーズ,固形スープなどの包装に用いる。バッグインカートンは,柔らかな内袋を紙器の内側に組み込んだ二重構造の紙器である。内袋を外箱にはりつけたものを,とくにラインドカートンという。固形乾燥食品や粉ミルク,乾燥みそなどの粉体食品や冷凍食品の包装に用いる。最近は包装の自動化を目指して,機械化により内容物の計量,充てんから包装まで一貫した工程にして紙器を作っている。このようなものをシステムカートンといっている。これに対し,手工業的に板紙で組み立てた本体の箱にアート紙などで仕上げばりを施したのが貼り箱である。
執筆者:臼田 誠人
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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