日本大百科全書(ニッポニカ) 「クラフトパルプ」の意味・わかりやすい解説
クラフトパルプ
くらふとぱるぷ
kraft pulp
木材などを原料としてクラフト法で製造した化学パルプ。略称KP。強度は大きく、茶褐色で白色度が低く、やや難漂白性であるが、多段漂白法の出現により大量の晒(さらし)クラフトパルプが生産されるようになった。クラフト法は、水酸化ナトリウムと硫化ナトリウムの混合液を蒸解薬液として、木材チップ等のセルロース原料を150~190℃で蒸解(煮てパルプ化すること)してパルプを製造する方法である。原料の種類によりパルプの収率は45~55%、パルプ製造の際に濃厚なパルプ廃液が大量に副生するが、硫酸ナトリウムを補給して濃縮し還元雰囲気中で燃焼することにより蒸解薬液が回収できるので、クラフト法を硫酸塩法(サルフェイト法)ともいう。その際パルプ工場で使う蒸気も電力も回収可能となり、燃料をほとんど購入する必要がなくなったため、経済的にも優れている。
クラフト法では針葉樹材、広葉樹材の別なく広く各種原料をパルプ化できる利点がある。得られるパルプはペントサン(ペントースの重合体)の含有量が多くパルプ収率が高いため、得られる紙は強度があるが、欠点としては不透明度が低いことがある。この傾向はとくに広葉樹を原料とするパルプで顕著である。そのため、このパルプから印刷用紙を製造するときは、通常、炭酸カルシウムや陶土の填料(てんりょう)を多く添加して裏抜け(印刷文字が紙の裏に透けて見えること)を防ぐ。
クラフトパルプは強度に優れるが、とくに針葉樹、それも未晒パルプにおいて著しい。そのため、このパルプでつくった紙(クラフト紙)はとくにセメントや米などの重量物を入れる重包装の紙袋製造に用いられる。
[御田昭雄 2016年4月18日]
『紙パルプ技術協会編・刊『クラフトパルプ』(1996)』