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厚い紙の総称でボール紙ともよばれる。板紙の紙質は硬く、腰が強い。黄板紙、白板紙、チップボール、クラフトライナーなど板紙の種類は多く、段ボール原紙や紙箱の原紙などに多く使われる。日本では第二次世界大戦後、あらゆる資源が不足したが、針葉樹材はとくに不足し、木箱ができず梱包(こんぽう)と輸送に苦労した。しかし板紙を張り合わせた段ボール箱が普及し始めたため、包装と輸送が容易になった。しかも空き箱は折りたたんで回収するとふたたび箱として利用でき、使えなくなった空き箱はつぶして古紙として回収し、いったん再生パルプとしたのち板紙を再生できるため、爆発的に生産と需要が増加した。板紙の生産量は、1980年代後半に年間1000万トンを突破し、2000年(平成12)には1279万トンとなったが、その後生産は下降ぎみで、2014年には1136万トンにとどまった。この間、板紙の生産量は、紙(洋紙)・板紙の全生産量の40%程度を占めている。
板紙の原料は、ほぼ100%が回収古紙であり、これは資源小国の日本にとっては数少ない無尽蔵ともいえる資源で、しかも再生可能な資源でもある。板紙の消費量が減り始めた今日、だれもがアイデアを持ち寄り、新しい便利な板紙製品と新規需要を生み出すことができれば、板紙は日本では即、増産可能であり、古い板紙が再生パルプとなり板紙に再生できるので、古板紙がごみにならないですみ、社会に便利さと豊かさをもたらすことになろう。
[御田昭雄 2016年4月18日]
かつて板紙は、木材を原料とする亜硫酸パルプ、クラフトパルプなどの化学パルプ、セミケミカルパルプ(半化学パルプ)、機械パルプのほか、非木材を原料とする藁(わら)パルプおよび古紙の再生パルプなどを配合し、板紙用抄紙機(しょうしき)で抄造した。その後、都市ごみの減量のため古紙の回収が強化されたことや、木材資源および森林保護などの運動の影響により、日本における古紙の回収率は2001年には60%、2013年には80%を突破するに至った。紙は薄い紙ほど原料に厳しく上質のパルプが好まれるため、厚手の紙、とくに板紙では原料として古紙が多用されることとなり、2014年時点では全古紙の93.2%が板紙原料として利用されている。またこのような事情から、除塵(じょじん)技術、脱墨技術、精選技術などの研究開発が行われ、再生パルプの品質は向上した。抄紙に際しては、ポリアクリルアミドなどの紙力増強剤も添加されている。こうして再生パルプの利用率がほぼ100%の板紙も多くなった。したがって、かつて原料にちなんで名前がつけられた、セミ中芯(なかしん)、クラフトライナー、マニラボールなどのなかには、原料にほとんど、あるいはまったく木材パルプや麻パルプを使わず、名称だけが残っている板紙も多い。
[御田昭雄 2016年4月18日]
板紙のうち、薄手のセミ中芯やクラフトライナーなどは一層構造で、通常長網(ながあみ)抄紙機またはツインワイヤー抄紙機などで抄紙される。一方、厚手の紙は多層構造をもち、通常は円網(まるあみ)抄紙機による抄紙が行われる。円網抄紙機はウェットパートに1~8程度の円網をもち、各円網で違う種類のパルプを用いて湿紙(ぬれた薄い紙の層)を形成させ、プレスパートで水を絞って1枚の湿紙にし、さらにドライヤーパートで加熱乾燥することにより、厚手の紙を製造する。円網抄紙機では、表層となる円網には色白のパルプを、中間層には低質の再生パルプを、下層には脱墨パルプを用いて白板紙を生産することができる。このように下級原料を用いても比較的良質な板紙が安価に製造できるので、代表的な板紙の抄紙機として用いられている。
[御田昭雄 2016年4月18日]
段ボールの上下の両面に使われる板紙であるクラフトライナーには、かつては木材を原料としたクラフトパルプが用いられていた。その後クラフトの再生パルプを配合して抄紙されていたが、現在ではほとんどが一般の古紙再生パルプを主原料とし、クラフトの再生パルプなどが副原料として配合されて抄紙される。段ボールの波板状のセミ中芯は、当初は木材チップを原料とする中性亜硫酸セミケミカルパルプを原料として抄紙していた。その後、段ボール古紙の再生パルプなどを配合していたが、現在では一般の古紙再生パルプほぼ100%で抄紙されている。段ボールの原紙としてのライナーと中芯原紙の2014年の生産量合計は、全板紙の約80%の910万トンに達した。
紙器用板紙の代表的なものには、白板紙、チップボール、黄板紙などがある。白板紙にはマニラボールと白ボールがあり、いずれも塗工、非塗工のものがあり、塗工したものは精緻(せいち)なカラー印刷用紙として使われる。マニラボールは、両面が晒(さらし)パルプ、中層が古紙の再生パルプなどを原料として、抄(す)き合わせで製造する。絵葉書、カード類、図鑑などのほか、食品、化粧品類の軽量の印刷箱などの需要がある。また耐折強度もあるので、折りたたみ箱として菓子などの容器に利用される。白ボールは表層は晒パルプ、中層は台紙の再生パルプ、裏面はパルプまたは古紙の再生パルプなどから抄き合わせで製造される。白板紙は印刷を施され、雑貨や洗剤などを入れるもっとも一般的な紙箱として用いられる。
チップボールは下級古紙の再生パルプを用いて多層抄きして得られる板紙で、機械箱、貼(は)り箱、台紙などとして使用される。
黄板紙は、かつて石灰藁(わら)パルプを主原料として古紙の再生パルプなどを配合して大量に製造された板紙で、黄ボール、裏白黄ボールなどがある。緻密(ちみつ)な打ち抜き加工などができるため型紙などに使われたほか、組立て箱、上製本などの固い表紙、紙管などに用いられた。日本には現在でも原料の藁はあるが、廃液処理に困難を伴うため、石灰藁パルプが製造できなくなっている。
そのほかにも板紙の種類は多く、紙管原紙、紙パルプの包装に使うワンプ、建材用の石膏(せっこう)ボード原紙、防水原紙などがある。
[御田昭雄 2016年4月18日]
『日本製紙連合会編・刊『紙・パルプ産業の現状』(月刊『紙・パルプ』2001年特集号・2001)』
主として紙器や包装に使用される厚手の紙の総称。俗にボール紙ともいわれ,表のように分類される。
通常120~130g/m2以上で,厚いものでは600g/m2に達するものもある。したがって抄紙機は普通紙の製造に用いる長網抄紙機では不十分であり,丸網式や,長網式に丸網式を組み合わせた多層抄合せ(すきあわせ)方式の抄紙機を用いたりする。段ボール原紙はライナー(平らな表板紙)と波状に成形した中芯原紙とからなり,両者を張り合わせて段ボール箱の原紙を作る。波形は30cm当り34~97個,高さは4.5~1.1mmで,4種があり,張合せ層もライナーが1枚のものから4枚のものまである。第2次大戦後の包装革命により木箱から段ボール包装に転換したため段ボール原紙の生産量は急増し,板紙における段ボール原紙の占める比率は70%近い。紙器用板紙を代表するマニラボール,白ボールは,何層かの抄合せで作るものが多く,さらし化学パルプ100%で作ったマニラボールは高級板紙としてアイボリー紙に分類される。白ボールは表層に白色度も高く強度も大きいさらしクラフトパルプを使用し,第2層の中白層に脱墨新聞古紙パルプ,その下の“あんこ層”と呼ばれる厚い層に新聞雑誌古紙パルプを使用し,値段の低減をはかっている。また板紙は,防水加工,ラミネートなどを施して液体容器にも使用されている。
→段ボール
執筆者:臼田 誠人
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…化学繊維やフィルムから作った紙も定義から外れるが,紙と同じ用途にあてる紙に類似したものは合成紙と呼ばれている。製紙工業では紙を紙(洋紙および和紙)と板紙に分けて規定しており,日本における両者の生産割合はほぼ55:45である。紙と板紙の区別は厳密ではないが,紙は薄く柔らかく,板紙は厚く硬いもので通常120~130g/m2以上の紙をいい,アメリカでは厚さ0.3mm以上,ドイツでは400g/m2以上の紙を板紙に分類している。…
…新聞用紙や印刷用紙,ティッシュペーパーといった生活関連需要を満たす洋紙と,段ボール箱などの産業用包装資材の原紙となる板紙,および両者の原料であるパルプを供給する工業をいう。パルプを原料として各種紙類を生産する産業を製紙業ないし製紙工業という。…
※「板紙」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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