紙燭(読み)シソク

デジタル大辞泉 「紙燭」の意味・読み・例文・類語

し‐そく【紙×燭/脂×燭】

室内用の照明具の一。松の木を長さ45センチ、直径1センチほどの棒状に削り、先端を焦がして油を塗り、火をつけるもの。手元紙屋紙で巻くので「紙燭」の字を当てる。また、紙や布を細くひねって油を染み込ませたものをもいう。ししょく。

し‐しょく【紙×燭/脂×燭】

しそく(紙燭)

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精選版 日本国語大辞典 「紙燭」の意味・読み・例文・類語

し‐そく【紙燭・脂燭】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「そく」は「しょく」の直音表記 ) 小形の照明具。紙や布を細く巻いてよった上に蝋を塗ったもの。ときに芯(しん)に細い松の割り木を入れた。
    1. 紙燭〈年中行事絵巻〉
      紙燭〈年中行事絵巻〉
    2. [初出の実例]「夜至一更、使数千僧脂燭、讚歎供養繞仏三匝」(出典:続日本紀‐天平一八年(746)一〇月甲寅)
    3. 「禿に紙燭(シソク)灯させ、雪隠(せつゐん)入口付置て」(出典:浮世草子・好色一代男(1682)七)

紙燭の補助注記

古くは「脂燭」と書いたが、持つところが紙であるところから、「紙燭」とも書かれるようになり、中世以降はもっぱら後者の表記になった。


し‐しょく【紙燭・脂燭】

  1. 〘 名詞 〙しそく(紙燭)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「紙燭」の意味・わかりやすい解説

紙燭(しそく)
しそく

屋内で用いる松明(たいまつ)のことで、「ししょく」ともよび、「脂燭」とも書く。手火の一種である。古く奈良時代から夜間の儀式に用いられた照明具の一つで、『続日本紀(しょくにほんぎ)』聖武(しょうむ)天皇天平(てんぴょう)18年(746)10月甲寅(こういん)の条にもみえる。太さ3センチメートルほどの棒状のマツの木を長さ45センチメートルぐらいに切り、あらかじめ先のほうを炭火で黒く焦がし、その上に着火しやすいように油を引いて乾かし、手元を紙で巻いて用いたところから紙燭といわれる。紙燭の製法については一定ではない。布や紙を撚(よ)り合わせて蝋(ろう)や油、あるいは松脂(まつやに)などを塗り込んでつくったものや、スギの芯(しん)、マツの小枝なども使われた。

 一般に使われたもので紙燭に近いものは信州などで行われたコトボシであろう。マツの「ヒデ」(マツの根の脂味(あぶらみ)の部分)を30~40センチメートルの手ごろな長さに切り、大人の親指ほどの細さに引き割って、その先端に火を点じ夜間室内の灯火に使った。マツのヒデは火が燃え尽き、燃え殻になっても落ちず、防火上からも安心できた。油やろうそくのたやすく手に入る江戸時代以降も携帯用灯火として重宝がられた。

[金箱正美]


紙燭(ししょく)
ししょく

紙燭

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世界大百科事典(旧版)内の紙燭の言及

【脂燭】より

…紙燭とも書き,〈ししょく〉ともいう。小型の照明具。…

【脂燭】より

…紙燭とも書き,〈ししょく〉ともいう。小型の照明具。…

※「紙燭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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