雪隠(読み)セツイン

  • ▽雪▽隠
  • せっちん
  • せんち

百科事典マイペディアの解説

〈せついん〉の促音(かわや),便所のこと,義堂周信の《空華集》によれば,の雪竇(せっちょう)禅師が霊隠寺の厠をつかさどったところから由来したとも,同じく唐の禅師雪峰義存が厠を掃除して大悟した故事に由来するともいう。地方名せんちん,せちん,せんち。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

便所のこと。「せついん」が変化した語で、もとは禅宗の用語。禅宗寺院には、東の東浄(とうちん)(東司(とうす))と、西の西浄(せいちん)の二つの便所があり、元来は西浄をさしていった。無著道忠(むじゃくどうちゅう)の『禅林象器箋(ぜんりんしょうきせん)』には、中国宋(そう)の禅僧雪竇重顕(せっちょうじゅうけん)は、杭州(こうしゅう)の霊隠寺(りんにんじ)でその徳を隠して浄頭(ちんじゅう)(便所を掃除する役職)の任にあたっていたため、雪隠とよばれたとある。そして隠は隠潜の義で、雪竇が隠潜したという意味の雪隠と、西浄の音が近いところから、雪隠が便所を意味するようになったという。[永井政之]

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精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 便所のこと。かわや。こうか。東司(とうす)。せっちん。せんち。せちん。また特に、茶室につけられた便所。砂雪隠。〔伊京集(室町)〕
※咄本・軽口露がはなし(1691)三「いやの南無阿彌陀仏を数々聞たる故、法然が日と同じやうに、雪陰(セツヰン)へ行も廿五度」
〘名〙
① (「せついん(雪隠)」の変化した語) 便所のこと。かわや。手水場(ちょうずば)。後架(こうか)。西浄(せいじょう)。せんち。せちん。せいちん。〔天正本節用集(1590)〕
※浮世草子・世間娘容気(1717)一「身共は若い時からわるひ癖で、雪隠(セッチン)へ参らねばよい思案が出ませぬ」
② 将棋で、王将が逃げこむ盤のすみのところ。
※雑俳・柳多留‐三三(1806)「よは将棊雪隠へ入れやたらひり」
③ 遊戯、十六六指(じゅうろくむさし)で牛部屋(うしべや)(=盤の三角になっている部分)のこと。
[語誌]禅宗で、法要儀礼の際に法堂(はっとう)・仏殿の西側に並ぶ者を「西序(せいじょ)」といい、彼らが用いる便所が「雪隠」で、「西浄(せいじょう・せいちん)」「西司」ともいう。「東序」の用いる「東浄(とうじょう・とうちん)」「東司(とうす)」とは対になる。しかし、後には方角とは無関係に、単に便所の意に用いられる。
〘名〙 「せっちん(雪隠)」の変化した語。〔かた言(1650)〕
※途上(1932)〈嘉村礒多〉「貴様は低能ぢゃい、脳味噌がないや、なんぼ便所(センチ)で勉強したかって…」

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世界大百科事典内の雪隠の言及

【重顕】より

…その詩文は,翰林の才ありと評せられ,《頌古百則》は《碧巌録》の原本となる。修行時代,陰徳をよろこび,人に知れぬように便所掃除にはげんだことから,雪隠の名ができたといわれる。【柳田 聖山】。…

【便所】より

…幕末から明治初年にかけて来日した欧米人の残した記録には,日本の都市の清潔に感嘆しているものが少なくない。【野口 武徳】
【日本】
 便所には厠(かわや),閑所(かんじよ),雪隠(せつちん),後架(こうか),背屋,〈かど〉,〈ふろや〉,御不浄,〈はばかり〉など異称が多い。このうち,〈かわや〉は《日本書紀》にもみられる古い語で本居宣長の《玉勝間》ではその語義を水上で用便する原始的な水洗便所である河屋と解したが,これは東南アジア等で広くみられる形式であり,日本でもかつて山村の一部でみられたほかに《万葉集》でもうたわれている。…

※「雪隠」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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