素浪人罷通る(読み)すろうにんまかりとおる

改訂新版 世界大百科事典 「素浪人罷通る」の意味・わかりやすい解説

素浪人罷通る (すろうにんまかりとおる)

1947年製作の伊藤大輔監督の映画。GHQ(連合軍総司令部)の指示で刀をふりまわす立回り(チャンバラ)を禁じられた占領下でつくられた時代劇の傑作で,天一坊と伊賀亮の物語を伊藤大輔ならではのダイナミックな映像(例えば押し寄せる御用提灯の渦を屋根の上から見下ろすようにとらえたカメラ)と格調あるタッチ(呼吸の長い移動撮影,〈反逆児〉伊賀亮を演ずる阪東妻三郎の堂々たる貫禄)で描いて当時〈出色の娯楽作品〉と評された。阪妻プロ(阪東妻三郎プロダクション)に迎えられて妻三郎の第1回トーキーとして撮った《新納鶴千代》(1935)以後ずっと低迷していた伊藤大輔がようやく創作意欲を回復した作品で,このあと続けて阪妻主演で名作《王将》(1948)を撮り,戦後の新しいキャリアを築いていくことになる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

今日のキーワード

苦肉の策

敵を欺くために、自分の身や味方を苦しめてまで行うはかりごと。また、苦しまぎれに考え出した手立て。苦肉の謀はかりごと。「苦肉の策を講じる」...

苦肉の策の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android