日本映画。1961年東映作品。〈時代劇の巨匠〉伊藤大輔監督と俳優・中村錦之助(のち萬屋錦之介,1932-97)の出会いの作品で,同監督の戦後の代表作となるとともに,錦之助を第一線の時代劇スターにした名作。錦之助は,すでに内田吐夢監督《大菩薩峠》三部作(1957-59),《浪花の恋の物語》(1959),《宮本武蔵》五部作(1961-65),河野寿一監督《独眼竜政宗》《風雲児・織田信長》(ともに1959),田坂具隆監督《親鸞》二部作(1960)などで,〈錦ちゃん〉の呼名で親しまれたチャンバラ・スターから脱皮して演技派への転身の意欲を見せていたが,この伊藤大輔監督作品で,折り目正しい重厚な演技と凜々(りんりん)とした発声法を身につけて,〈芸のともなった〉貫禄ある大スターに成長する決定的な転機をつくり,《丹下左膳》の大河内伝次郎,《王将》の阪東妻三郎とならんで,伊藤大輔が育てた三大スターとみなされるに至った。《反逆児》は,最初は大仏次郎が尾上松緑のために書き下ろした徳川家康を主人公とする戯曲《築山殿始末》(築山殿には山田五十鈴が予定されていた)の映画化であったが,その後企画が流れ,伊藤大輔の脚本で錦之助のために家康と築山殿の悲運の子・信康を主人公にしたドラマに書き換えられた。
執筆者:広岡 勉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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